痛部屋①

部屋に入るとベッドカバーやカーテンはもちろん、壁、天井まで萌え系のイラストが埋め尽くしている。ここは東京・麻布十番のとあるゲストハウスの「痛部屋」だ。「痛い」という言葉は要するに「見ていて痛々しい」ことを指すネットスラングだが、この空間は痛々しさを超えてもはや前衛的なアート作品のようである。

・中国人留学生が仕掛ける

この「痛部屋」を仕掛けているのは秋葉原のベンチャー企業、株式会社SO-ZO。痛部屋の施工をはじめ、萌え系イラストのカーテン、シーツといったインテリアグッズを受注、生産している会社だ。

代表は早稲田大学工学部に通う中国人留学生の王冉(オウ・ゼン)さん。王さんは会社立ち上げのきっかけを「メイドインジャパンの商品が大好き。日本でものづくりの技術を学び、挑戦したかった」と真面目な顔で話すが、中身は根っからのオタクだ。

「中国・上海にいる時からドラゴンボールや、ドラえもんは毎週欠かさず見ていました。日本に来たら萌え系のアニメにどハマり。いまはよくオタク系イベントにコスプレして出かけています(笑)」

・宿泊施設「外国人観光客に泊まって欲しい」

現在は、都内を中心に10カ所ほど「痛部屋」の受注を受けている。クライアントの大半はホテルとゲストハウスだが、民泊ビジネスに参入する不動産オーナーからの問い合わせも増えている。「外国人観光客に響くような新たな価値をつけたい」と相談を受けることが多いそうだ。

痛部屋③

背景には、激増する外国人観光客と、民泊の規制緩和がある。現に痛部屋を利用した外国人観光客の多くが「こんなクールな部屋は初めて」「またここに泊まりたい」とメッセージを残している。そんな宿泊施設の差別化に、「痛部屋」は一役買っている。

・アーティストに直接交渉

部屋を統一するイラストは、国内外で活躍するアーティスト・タカハシヒロユキ氏をはじめ直接絵師に交渉し描き上げてもらっている。そんなところにも王さんのオタクのセンスが光る。「どのクリエーターも『日本に興味を持ってくれる部屋になれば』と協力してくれています」と王さん。

痛部屋②

・リーズナブルな宿泊料金

宿泊施設は、エリア、部屋によって金額が異なるが、ほとんどが1万円以下、最安だと4000円台。

秋葉原発のこんな変わった発想が、日本のポップカルチャーを盛り上げる。

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参考リンク:痛部屋
執筆:Batten Kandagawa

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