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計21人が出馬した今夏の東京都知事選挙。マスコミは主要3候補の動向ばかりを報道し、蚊帳の外に置かれた他候補は激怒。遂には候補者有志が在京キー局宛てに要望書を送付する事態に発展……したのは、皆さんご存知の通り。

そんななか、泡沫中の泡沫候補と言われながらも、軍服姿の異様なポスターや超過激な政見放送で都民の度肝を抜き、一部で熱い注目を浴びたのが、若干33歳の無所属・後藤輝樹さんだ。

・落選、落選、落選。でもやるんだよ!

陸上自衛隊から汚部屋の掃除まで、豊富な職歴を持つ後藤さん。政治家になる夢を実現するため、20代前半はひたすら地道な貯金をしながら、28歳で神奈川県議会議員選挙に出馬(落選)。

これ以後、目黒区長選、港区長選、千代田区長選、東京都議選、千代田区議選と立て続けにドババババと立候補し、落選落選落選!

それでもめげず、東京都知事に立候補、結果、7千票余りを獲得したが惜しくも落選。これまで没収された供託金だけでも優に600万円を超えるという怪人だ。

落選直後のインタビューということで、ピリピリした厳しい雰囲気を予想していたところ、突然変な動きでカメラを惑わすなど、余裕たっぷりの後藤さん。

落ち着きが無いというか、規格外に旺盛なサービス精神が仇となり、空回りしているような──。それでいて普段は常識人。素の後藤さんは人一倍真面目な人だ。

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・ポスターはたった100枚!

自分がやるべきことをするだけ。他人から何を言われても、どう思われても気にならない──。

親に迷惑がかからないよう、家族とはあらかじめ縁を切り、普段は家賃4万円ポッキリの部屋で暮らしながら、無名の労働者として静かに働いている後藤さん。

それがひとたび立候補するや、資金不足で100枚しか刷れなかったポスターを抱え、チャリにまたがり繁華街へ。オヤジに絡まれ、子連れの母親から「なにこれ!?」と指さされながら、あらかじめ選びに選んだポイントに、黙々とポスターを貼ってゆく。

今回の軍服ポスターはもともと選挙用に撮ったものではなく、写真館でなんとなく撮影。出来が良かったので採用を決めたそうだ。肝心の候補者名が入っていない理由を聞くと、

「デザインスキルがないから、名前を入れるとどうしてもダサくなっちゃうんです。だから無くてもいいかなと……。名前のないポスターを変だと思ったら、ネットで調べれば良いと思うし、候補者ではなく有権者のための選挙ですから、もっと積極的に参加してもらいたいんですよね」

そもそも、どれだけ貼る場所を厳選しようが、100枚しかないポスターの効果はたかが知れている。政見放送に全てを賭けていた後藤さんは、自宅でのリハーサルを50回あまりも繰り返し、万難を排してNHKに向かった。

・NHKを凍りつかせた政見放送

天下のNHKのスタジオで、そのものズバリの放送禁止用語を連呼。カメラの前で踊り狂い、奇妙な動きを繰り返す。と、それまで和やかだったスタジオの空気が、音を立てて凍りついてゆくのを感じた。

「これは放送できません」と渋るNHK。放送されなきゃポスターを貼っただけで選挙が終わってしまう。

死に物狂いの後藤さんは、NHKだろうが選管だろうが訴えてやる勢いで食い下がり、表現の自由を盾に交渉。なんとかぎりぎりのところで放送されたが、NHKは問題部分の音声を全て削除。結果、放送禁止用語叫びまくりのNHK版は、ほとんど意味不明の実験映像みたいになってしまった……が、それが逆に怪しさと味わいを醸し出し、ネットで爆発的な話題となったのはみなさんもご存知の通り。

「ふざけてる」だの、「まじめにやれ」という声も散見したが、真剣に、まじめに取り組んだからこそ、NHKがあれを放送する羽目になったわけで、後藤さんの生半可ではない根性と情熱を、ちょっぴり羨ましく思いました!

参考リンク:後藤輝樹様のオフィシャルサイト
Report : クーロン黒沢
Photo : Rocketnews24.


▼いきなり政見放送のポーズをとってくれた!
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▼実に3時間近く、熱く語ってくれました。
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▼これからも応援してます!
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