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2016年7月末、凄惨な大量殺傷事件が発生した。神奈川県相模原市の障がい者施設「津久井やまゆり園」で、19人もの人々が殺害されたのである。この施設の元従業員であった容疑者は、2月に精神科病院に措置入院していたことが明らかになっている。

今後の裁判の行方が気になるところなのだが、この措置入院は判決に影響してくるのだろうか? また判決が出るまでには、かなり長い時間がかかると予想される。いつ判決が下されるのかについて、専門家に尋ねてみた。

・刑事責任能力が問われる

今回質問したのは、アディーレ法律事務所の鈴木淳也弁護士である。措置入院を受けたことにより、判決に影響はあるのか? 刑事責任能力が問われることになると思うのだが、精神鑑定の結果によっては、まさか無罪判決はあり得るのか? そして判決が下されるまでにどの程度かかるのかについても尋ねた。

・鈴木弁護士の回答

「本件は殺人事件ですので、裁判員裁判対象事件です。本件の特徴は、犯行前に『措置入院』をしていたことです。そのため、検察は事件当時に刑事責任能力があったのか見極めるために、精神鑑定を行う可能性が高いです。なぜかというと、犯行当時心身喪失状態であれば罰せられない規定があるため(刑法39条1項)、起訴するかどうかの判断に影響するからです。

この精神鑑定には1日で終わる『簡易鑑定』というものと、2~3カ月ほど留置をしておこなう『本鑑定』というものがあります。後者であれば起訴されるまで日数を要することになります。起訴された後も裁判員裁判対象事件は、裁判が始まる前に公判前整理手続をもうけることになっています(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律49条)。

この公判前整理手続にて争点を明確にし、また裁判員裁判は集中審理するシステムになっています。自白事件で公判前整理手続を経た場合、起訴から判決まで平均で約5カ月程、否認事件であれば約6カ月を要してます。

以上のことから、本件でも本鑑定を経てだと第1審の裁判が終わるまでに、逮捕されてから7~9カ月要する可能性があります。本件が無罪になるかどうかは、刑事責任能力の有無によって決まりますが、事件前日にハンマーや結束バンドを購入したり、衆議院議長に送った手紙に記載された内容どおりに犯行が実行されており、かなり計画的な犯行といえます。

措置入院が解除される前に、医師と面会しその言動から他人を傷つけるおそれがなくなったとして、退院に至っていることからすると、刑事責任能力を否定するのは難しいのではないかと思われます」

以上である。鈴木弁護士の話によると、速やかに捜査が進んだ場合、第1審が終わるまで7~9カ月、つまり早くても2017年2月までかかるかもしれない。今後の動向が気になるところである。

協力:アディーレ法律事務所 鈴木淳也(札幌弁護士会所属)
執筆:佐藤英典
イラスト:Rocketnews24