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2016年5月21日、東京都小金井市のイベント会場入り口で、大学生・冨田真由さんが男に刺されて重体となる事件が発生した。産経新聞によると、冨田さんはアイドル活動を行っており、傷害容疑で逮捕された岩埼友宏容疑者は彼女のファンだったという。

現在、「アイドル殺人未遂事件」もしくは「アイドル刺傷事件」とメディアを賑わせるこの事件で、にわかに問題視されるアイドルとファンの関係。近年増え続けるファンの凶行について、地下アイドル事情通に話を聞いてみた。

・アイドル好きの30歳男性

「匿名なら」という条件付きでインタビューに答えてくれたのは、地下アイドルのライブに足しげく通う30歳男性「愛通大輔(あいどおる だいすけ)」(仮名)さんだ。
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愛通大輔さん(以下、愛通)はAKB48からアイドルの握手会に行くようになり、ももいろクローバー、私立恵比寿中学などを追った後、地下アイドルのライブに通うようになったという。彼は開口一番、私にこう言った。「そもそも、冨田真由さんはアイドルではない」と。

──え!? そうなんですか?

愛通「はい。事件当初にアイドルと報道されたからでしょうか、世間ではアイドルと思われていますが、そうではありません。冨田さんは『シークレットガールズ』っていうドラマの中でアイドルグループ・シークレットガールズの一員であるEYEを演じていたのです。

そのスピンオフでアイドルイベントに出たことはあるようですが、その活動は女優さんでアイドルとは言えないですね。また、最近のライブ活動を見ても、いわゆる地下アイドルが対バンしてドルオタが集まるようなイベントには出てません。どちらかと言うと、シンガーソングライターとして活動していたようです」

──そうだったんですね。しかしながら、ファンの凶行が増えてきているように感じます。今回の事件然り、AKB48もメンバーが襲撃される事件が起きました。ファンとの距離が近い地下アイドルは、そのような危険と隣り合わせなんでしょうか?

愛通「まず地下アイドルの説明からしましょう。これには諸説あり、ライン引きが難しい部分ではあるんですが、一説として、ライブ活動が主体のアイドルということが挙げられます。テレビやドラマやラジオではなく、ライブハウスが “現場” のアイドルたち……それが地下アイドルです。
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そして危険と隣り合わせなのかについてですが、ファンはサラリーマンとかで社会生活を送ってる人たちでみんな普通ですよ。大の大人が掛け声やフリを合わせたりするのは、傍から見たら気持ち悪く映るのかもしれないですが、それも一生懸命歌って踊っている女の子を応援したいだけなんです。

確かに極稀に変な人はいますが、それは電車とかに乗っていて変な人に会うのと同じくらいの割合です。そもそもファンの間にも社会があって……例えばバンドとか絵を描いてる人とか、そういう表現の1つとしてアイドルがあるだけなんで、そういうのを応援する人と何も変わりません」

──では、そういった「応援したい」という気持ちが高まりすぎて事件を起こすことはないんでしょうか?

愛通「ツイッターなどでアイドルに変な絡み方をする人たちのことを “迷惑オタク” と言うんですが、それは相手に対する承認欲求が強い人がしがちです。でも大多数のアイドルファンは、アイドルに自分を認識されたくて応援してるわけではなく、ただ単に応援したいからしてるだけなんです

確かに、極稀に握手会に着ぐるみを着てくるような承認欲求の強い人はいます。しかし、そういう人が一線を越えて事件を起こす可能性は、それこそ電車とかに乗っている変な人が事件を起こすのと同じだと思います」

──この事件は、仲間うちではどう受け止められているんでしょうか?

愛通「今回の事件が “ファンがアイドルを刺した事件” と報道され、全てのアイドル好きが色眼鏡で見られることは悲しいです。みんな人間なので攻撃されると傷つくし、どうしたらそうならないかを考えてます。ただ単に楽しみたいだけのはずなのにな……」

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以前よりファンとの距離感が縮まり、その対応が問われるアイドル業界。今回の事件をきっかけに、夢見る女性たちが安心して活動できる日が来ることを願いたい。また、利己的な理由で凶刃にさらされた冨田さんの回復を祈らずにはいられない。

参照元:産経新聞
Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

▼「みんなただ単に楽しみたいだけのはずなのに……」と肩を震わせる愛通さん
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