higashisumiyoshi

昨年2015年5月、1人の男子高校生が南海電鉄高野線の踏切に入り、電車にはねられて自殺する事件が発生した。現在、その死を巡り、男子生徒の祖父と母親が「学校の指導」が原因として、府に計約7700万円の損害賠償を求める訴訟を起こしている。

今月5月18日、この訴訟の第1回口頭弁論が行われたことを産経新聞が報じた。この事件の概要を知った時、私(中澤)の脳裏には、ずっと忘れていたある1人の男性教師との出来事がよぎった。

・事件の概要

まずは1年前の事件の概要から説明しよう。昨年5月15日、大阪府立東住吉総合高校の生徒だった彼は、授業中に席を立って雑談している同級生に注意をした。しかし、注意された同級生が向かってきたため、もみ合いの喧嘩に。

その後、教師たちは別室で男子生徒に反省文を書くよう指導。入れ替わりで監視し、自分が先に手を出した旨の文章を書くまで下校させなかったという。そして反省文を書いていた午前10時から午後6時の間に、学校は停学5日の処分を決定していたそうだ。

・フラッシュバックする記憶

そのことを知った私の脳裏によぎったのは、地元大阪府の中学校に入ったばかりの頃の出来事だ。いくつかの小学校から集まった生徒の中には、私の出身の小学校の常識では考えられないようなことをするやんちゃなヤツもいた。

・悲しきA君

ある時、予鈴が鳴った後にヤンキーグループの最下層に属しているA君が、突然私の鉛筆を教室の外に投げ捨てた。まだ、同じクラスになって間もない時期だったので、そんなことされる理由や確執は一切ない。

多分、彼は「こうすれば自分のグループの人にウケる」と思ったのかもしれない。今にして思うと、A君もそのグループの中でキツイ扱いを受けてたような気がするし、そのストレスを発散するにはボッチをイジめるくらいしかなかったのかもしれない。

・もっと悲しき私

ともかく、私は投げられた鉛筆を普通に取りに行った。すると、隣の部屋に入ろうとしていた教師に呼び止められた。「お前何やっとんねん」と。後になって知ったのだが、この教師は学校では怖いことで有名な人だった。

そこで、廊下に出るまでの経緯を説明すると驚くべきことが起こった。私はその教師に、30分ほど怒鳴り散らされたのだ。理由は「口の聞き方が悪い」ということ。私は戸惑い、ただ立ちつくすしかできなかった。

・理不尽な教師の対応

しかも、私への30分の “指導” が終わると気が済んだのか、A君への “指導” はすぐに終わった。5分くらいだっただろうか。それを見ていると、私の頭の中は、教師への怒りと不満でいっぱいになった。

全ての原因を作ったA君への怒りを感じている余裕なんてない。そして発散することができないその怒りは、目からしずくとなって流れ落ちていた。悔し泣きだ。

・東住吉総合の男子生徒の気持ち

もしも教師が監視する中、午前10時から午後6時の8時間も使って、自分が先に手を出した旨の数行の反省文を書かされた場合、一体どういう気持ちか想像するに余りある。暴力をふるったのは悪かったにしても、もう少し本当に悪いのは誰かを鑑みた対応はできなかったのだろうか。

東住吉総合高校の事件の第1回口頭弁論で、府は「原告の主張には事実と異なる点がある」と請求棄却を求めたが、はたして真実と言えるのか。一人の少年が命を絶った事実を重く受け止め、真実が明らかになる日が来ることを願いたい。

(追記 2016年5月20日 19時27分)記事公開当初、高校名を間違って掲載しておりました。関係者の皆様、読者の皆様にご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。
参照元:産経新聞
執筆:中澤星児