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2016年4月1日から、電力の自由化が開始される。メディアでもたびたび目にするから、もちろんみなさんご存じのことだろう。だが正直、記者は「電力自由化が始まるのかー」とは思いつつも、『電力自由化』が何を意味するのかよくわかっていない……お恥ずかしい!

「誰か優しく教えてくれるエキスパートはいないかなぁ」なんて思っていたところ、博士号を持つ関西大学システム理工学部電気電子情報工学科の准教授・安田陽(やすだ よう)氏に、話を聞く機会に恵まれた。よーし、ここは思い切って素人質問をぶつけちゃうぞ!

・電力の超エキスパート

まずは安田氏のプロフィールをざっとご紹介しよう。世界的機関である、IEA(国際エネルギー機関)やIEC(国際電気標準会議)などの国際委員会メンバーである同氏。多くの書籍を手掛け、テレビや新聞にも登場するなど「とりあえずこの人に電気のことを聞いておけば間違いない!」という偉い人なのだ。

そんな安田氏に、「電力自由化ってなんなんですか?」という質問を皮切りに、素人ではよくわからない電力自由化についての疑問をぶつけてみたのでご覧いただきたい。以下が、安田氏と記者のやり取りである。

・そもそも「電力自由化」ってなに?

記者:「恥ずかしながら、私は “電力自由化” がよくわかっていません。もしかしたら失礼な質問もあるかもしれませんが、子供に諭(さと)すつもりで教えていただけたら幸いです。本日はよろしくお願いいたします」

安田氏:「こちらこそよろしくお願いします」

記者:「さっそくなんですが、電力自由化ってなんなんでしょうか? 私の理解だと、電力会社がこれまで独占していたものが、電力自由化により多くの企業が参入できるようになる……くらいなんですが」

安田氏:「そうですね。おおむね合っています」

記者:「おお、そうですか。では新規参入してくる企業というのは、独自で発電機などを持っているものなのでしょうか?」

安田氏:「これまで “電力会社” と一口に言われていましたが、実は大きく分けて3つの役割りに分けられます。それは『発電・送電・小売り』です。この3つをまとめて電力会社と呼ばれていました」

記者:「ほうほう」

安田氏:「今回、自由化になるのは『小売り』の部分で、野菜に例えると発電が畑送電が流通小売りが八百屋ですね。つまり東京電力や関西電力だけではなく他の八百屋さんも、ある程度の資格があれば店を開いていいですよ、ということです」

記者:「おお、非常にわかりやすいです」

安田氏:「“自由化” 自体は2000年代から徐々に進んできているのです。いま話題になっているのは『小売り』の部分で、発電自体はすでに自由化が始まっているんですね

記者:「それは知りませんでした」

安田氏:「厳密にいうと、これまでも大手企業などは八百屋さんを選べたんですが、一般の方が八百屋さんを選べるようになったのが、今回2016年4月の電力自由化ということになります」

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・小売り会社を変えたら「電気が来なくなる」ことはあるのか?

記者:「よくわかりました。では次に質問なんですが、これまで我々が電力会社を使っていて、電線が切れるなどのアクシデントが無い限り、電気が切れるということはないじゃないですか? もし他の会社に変えた場合、『電力不足で電気が届きません』ということは起こりえるのでしょうか?」

安田氏:「それはありません。なぜならば、野菜でいうところの青果市場があり、そこに電力が売り買いされているからです。万が一足りなくなった場合は、八百屋がそこから買うという仕組みになっているので、八百屋を変えたら電気が来なくなるという心配はありません」

記者:「なるほどですね」

安田氏:「ちなみに、万が一契約した八百屋が倒産した場合も、送電会社が一時的に肩代わりすることが義務付けられています」

……と、何となく「電力自由化」がわかってきたところで、小売会社の選び方など、続きは2ページ目へGOだ!

Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.