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あまり知られていないが、きょう2月9日は「漫画の日」である。いつもシメキリ間際に降臨してくれる “手塚治虫先生” の命日が1989年2月9日。というわけで今日は「漫画の日」なのだ。ちなみに、制定したのは漫画専門の古書店『まんだらけ』とのこと。

さて、せっかく漫画の日なのだから、読むだけじゃなくて描いてみよう! でも「同じ角度しかキャラを描けないから、漫画なんて描けない」なんて言う人もいるかもしれない。でも安心してほしい。同じ角度しか描けなくても、漫画は描けるのである!!

・超実戦的な9つの裏テクを伝授

つい先日、プロのミュージシャンのくせに案外イラストも上手な中澤星児記者(33)に「うまいじゃん! 漫画を描いてみては?」と提案したところ、「同じ角度しかキャラを描けないから、漫画なんて描けないっス」と弱気すぎる返答が返ってきた。

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──その時、「同じ角度しか描けなくても漫画は描ける!」と言い切ったのが、キャリア16年目に突入のプロ漫画家・マミヤ狂四郎先生(36)、というか私だ。さっそく、どのように漫画を作り上げていくのか、超実戦的な9つの裏テクを伝授してもらおう!

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その1:リバーシブル(反転)

基本中の基本テク、それが「反転」である。左向きしか描けないのであれば、右向きに反転すれば良いのだ。反転すると、デッサンが狂うことが多々あるが、そんなこと気にするな。気にするくらいなら絵の練習をしろ。そしたら右向きも描けるようになるぞ!
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ちなみに、マミヤ先生はデビュー間もないころから反転テクを駆使しまくり、「1キャラ描いたら最低でも4〜5年、100回以上は反転してリサイクルしないと気が済まない」と言うほどのエコロジスト。地球にやさしい漫画テク、それが “反転” だ。
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その2:黒くぬれ!(シルエット)

そのまんま “キャラを黒く塗りつぶす” トリックアート的な技法。黒塗りすると、「前向きか後ろ向きか」が分からなくなるので、黒人間を手前に配置、奥側に「こちら向き」のキャラを配置すれば……アラ不思議! あっちを向いているように見える!!
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ちなみにこのテクは、先日マミヤ先生が発表した「タイムリーパータクヤ」でもバリバリ活用されている。なお、1966年に発売されたローリング・ストーンズのシングル『黒くぬれ!(Paint It, Black)」とは全く関係ないが、あれは名曲である。
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その3:スーパーファミコン(回転拡大縮小)

リバーシブル(反転)よりもダイナミックにごまかせるのが、回転拡大縮小をフルに駆使した「スーパーファミコン」という16ビットなテクニックだ。思い切りグルグル回して、キャラに動きをつけてしまおう。効果線を加えれば鬼に金棒。無敵である。
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ちなみに、マミヤ先生のスーパーファミコンテクニックが究極に炸裂した作品としては、今から2003年に発表された『燃えよ! アングラ君』の「秋葉原で中国人から違法コピーCDを買ったら粗悪品だったのでクレームをつけに行ってみた」が特に有名。
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その4:マリオネット(可動式フィギュア)

この「マリオネット」は究極にして最強のマンガ裏テクといっても過言ではない。キャラの四肢(しし)を切り取り、好みの角度に回転させ、さらに関節で折り曲げ……と、あたかも可動フィギュアのように動かすことにより、再現可能なポーズは無限大!!
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「そんなバカな!」と思った人は、まだ甘い。手抜きを極めて16年のマミヤ先生は、デビュー間もないころから実戦でも「マリオネット」を堂々と駆使しまくっている。一度でも覚えてしまったら「もう描けなくなる!」ので、ダメ・ゼッタイな禁断テクだ。
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その5:だいじょうぶだぁ(シンメトリー)

よく「横向きの顔しか描けない」だとか「正面の顔を描いても左右が均等にならない」と悩んだりする超マジメな漫画家の卵ちゃんたちがいるが、描けなくても だいじょうぶだぁ。半顔を鏡に映すように、ペタッとくっつけちゃえば良いのである。
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そもそも人の顔は左右均等ではないので、均等にする必要もない。片目がデカくなりすぎたって問題ない。「そういう人」だとすればだいじょうぶだぁ。何なお、このテクを実戦で使うのは相当の勇気と度胸が必要となるが、マミヤ先生は使っている。
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その6:マジシャン(煙幕)

あたかも、素材に自信がないので化学調味料をバリバリ入れてごまかすラーメンのごとく、効果音や効果線、コマ割りなどもバリバリ駆使して「同じ角度しか描いていない」ことに意識を向かなくさせる、マジシャン的な煙幕マシマシテクニックだ。
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ちなみに、このテクニックの究極系に、通称「文字流し」なるギャンブル的な技法がある。うまくいけば、文章のリズムだけで読者の目線をコントロールし、下手な絵はチラ見するだけ……という奇跡が起こる。無論、成功させるには相当な文章力が必須。
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その7:ジークンドー(截拳道)

奥義「マリオネット」を使えば、このテクニックを使う必要はないのだが、マリオネットするのすら面倒なときはジークンドーだ。キャラを動かしたいけど、描けない。ならば、“たしかに動いたんだけど、戻りが速すぎて見えない” ことにすれば良い。
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マリオネットと併用すれば、さらにスピード感あふれる動きが生まれる。さらなるスピード感を求めたいのであれば、コマをすべてGIFアニメにして動かしてしまうのも手だ。いずれにしても、“同じ角度しか描いていない” という事実に注目である。
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その8:リアリズム(実写)

同じ角度しか描けない。というか描きたくない。というか絵を描くのが面倒くさい。そんな時は実写に限る。たとえば今回の場合だと、中澤星児記者そのものがキャラになり、動きをつけてしまえば良いのである。お面を作るだけで、ハイ問題解決だ。
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ちなみに、しつこいようだがマミヤ先生もまた “実写使い” のプロである。手を描くのが面倒なときは自分の写真と合成し、クルマを描くのが下手くそだったら、100円くらいのクルマのオモチャを撮影し、絵と合成すれば良いのである。簡単なことだ。
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その9:ワンウェイ(開き直る)

どうしても同じ角度しかキャラを描けないなら、むしろ徹底的に、頑固一徹、同じ角度でキャラを描いて漫画を作ってしまうのも手だ。たとえばそれが左向きだったら、キャラ全員、何らかの事情で “右側” を見せられない設定にすれば良いのである。
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たったこれだけで、まるでエジプトの壁画のような、なぞめいた漫画になる。おそらく最初は「左向きだけしか描けないのかよ!」と読者はツッコむことだろうが、いつしか、きっと、くせになる。そして、「次号、いよいよ右向きか!?」と予告されたら「マジで!?」となる。「つ、ついに……」となり、「絶対に見たい!」となるのだ。
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──以上9つのテクニック、いかがだったであろうか。実際に、漫画の実戦で使えることは、しつこいくらいに漫画家マミヤ狂四郎が示しているので、安心して使えるぞ!

執筆:GO羽鳥
協力: マミヤ狂四郎
Photo:RocketNews24.