ranboutaiki
純文学の新人に与えられる賞である芥川賞。受賞作がしばしばベストセラーとなるこの賞は、純文学の賞の中でもっとも影響力のある1つだろう。しかしながら、私(中澤)は、最近の芥川賞に興味を失くしていた。理由は簡単、好きな作家があまりノミネートされないから。思えば覆面作家・舞城王太郎さんがノミネートされている時の芥川賞は面白かった

賞の性質から考えると、純文学マニアでもない私が知っているほど著名な作家さんばかりがノミネートされるのもおかしな話なんだけど……と思ってたら、ずっと追っかけている本谷有希子さんが「154回芥川賞」を受賞したではないか。……マジか!? 超嬉しい!!! そんなわけで本谷有希子さんの小説でオススメトップ3を選んでみた。

【本谷有希子さんのオススメ小説トップ3】
3位 あの子の考えることは変

彼氏持ちで平凡な生活を好む巡谷とダイオキシンに怯える電波女・日田、高井戸で同居する2人の青春群像劇を描く『あの子の考えることは変』。序盤では、変人・日田に振り回され続ける巡谷。しかし、物語が進むにつれて巡谷が暴走しだし、後半では逆に日田を振り回すようになる。

答えのない問題に悩みぶつかり合った末、結局答えは出せないが、なぜ2人が同居しているのかは伝わってくる「Don’t think ! Feel」な作品。ラストの焼却塔を登るシーンの刹那的な美しさはまさに青春である。
anokono

2位 腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

映画のヒットで一気に有名になった『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』は本谷有希子さんの出世作。漫画を描くことが趣味の暗い妹・和合清深とそんな妹を恨む女優志望の姉・澄伽。両親の事故死により田舎へ帰省したことから、澄伽は清深に復讐することを決意する。

澄伽が清深を恨む理由や姉妹の間に流れるドロドロとした感情、姉妹の人間性から迎える結末まで、すべてがえぐられるように “痛い”。なお、映画も小説とはまた別の世界観が展開されていてオススメだ。
hunukedomo

1位 乱暴と待機

本谷有希子さんの作品のみならず、オススメの小説を聞かれた時にまず私が名前を挙げるのが『乱暴と待機』。本谷さん独特の “人間のドロドロしたいやらしさをえぐりながら物語のテンションがオーバードライブしていく” ようなスタイルは、この作品で一つの頂点を迎えていると言っても過言ではないだろう。
ranboutaiki
ちなみに、本作品も映画化されており上映当初映画館に見に行ったのだが、ヒロインを虐める番上あずさ役の小池栄子さんの吹っ切れた演技が光りまくっていた。また、本作品は海外の映画サイト『Taste Of Cinema』が発表した「過小評価されている21世紀の日本の映画」ランキング2位にランクインしている。

小説原作の映画が好きではない私だが、なぜか本谷さん原作の映画は面白い。それは小説家以前に演劇作家である彼女の性質に由来するものなのかもしれない。芥川賞受賞作である『異類婚姻譚』は本日2016年1月20日発売。ホント読むのが楽しみだ。

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.