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強い孤独や不安を抱えた人が、電話で悩みを打ち明けることができる場所と言えば……そう「いのちの電話」などの自殺防止ホットラインだ。でも一体どんな人々が、電話の向こうで話を聞いてくれるのだろう?

その答えが今回、海外サイト Reddit にて見つかった。なんと海外の「自殺防止ホットライン」非営利団体にて相談員ボランティアとして働く女性が「なんでも聞いてね!」と質問を募集したのだ。ということで厳選した39の質疑応答の模様をお届けしたい。

Q1:電話に出た後、どんな風に会話をすすめるんですか?
A1:まずこちらの名前を名乗ります。相手の名前は無理には聞き出しません。そして、電話してきた理由について質問します。その後、自殺願望があるかも聞き、「ある」という返事がかえってきたら、そのことについて話します。また自殺未遂経験があるかなども質問します。

その後も色々と質問をして、相手の状況や気持ちなどを聞いていきます。相手にたくさん話してもらえば、私たちは相手の背景をもっとよく知ることになり、その人にあった解決方法を探ることが出来ます。

Q2:何度も電話をかけてくる人っていますか?
A2:私たちの「自殺防止ホットライン(以下、ホットライン)」にかかってくる電話の多くが、リピーターによるものです。1日に10回も電話をかけてくる人もいますよ。

Q3:男女、どちらからの電話が多いですか?
A3:正確なことは分かりませんが、私の経験から言えば、女性の方が少し多い気がします。一般的に、男性は女性に比べて、他者に救いを求めない傾向にあると言われています。

Q4:相手の命を救えなかったことがありますか?
A4:ホットラインにかけてきた時点で、すでに私たちは半分 “勝っている” ことになります。なぜなら死にたくないから、人々は私たちに電話をかけてきているからです。

けれども私たちとの会話の最中に「死」へと気持ちが変わり、命を絶ってしまう人もいます。私にも「死んでしまったかもしれない」相手が1人います。ある女性が「自分の体を深く切りつけた。腕から血が流れている」と言い置いて、住所も何も言わずに電話を切ってしまったんです。彼女のことは、今でも頭から離れません。

35年のキャリアを持つ同僚は、1人だけ電話中に命を絶った人間にあたったことがあるそうです。

Q5:電話の向こうの相手が、あなたとの会話中に自殺行為を始めたらどうするんですか?
A5:とても稀ですが、「一人で死にたくないから」といった理由で、電話をかけながら自殺を試みる人は存在します。でもそれは、私たち相談者の心の傷になりかねません。

なのでそういった電話を受けたときは、こちらから切るように指導されています。もちろん切る前に「あなたを助けたい。助けられるのなら、出来る限りのコトをする」と告げますが、もしも助けさせてくれない = そのまま自殺するのなら、受話器を置きます。

Q6:なぜ、ホットラインの相談員ボランティアになろうと思ったんですか?
A6:2つ理由があります。1つは、人を助けることが好きだから。もう1つは、スクールカウンセラーを目指しているので、その経験を積むためでもあります。心の病を抱える10代〜20代の若い人たちは多いんです。

Q7:この仕事をやっていて、気分が落ち込みませんか?
A7:そうですね、気分が落ち込みがちな仕事でしょう。けれども、私が所属するホットラインの団体には、しっかりとしたサポートシステムが備わっています。私たちには2人のコーディネーターがついており、気分が落ち込んだときや、誰かと話したいときなどは、どんな時間でも彼らに電話していいことになっています。

また気分転換も大切です。難しい相手から電話がかかってきた後など、同僚とよく話して、気分を落ち着けています。それでも個人の性格も大きいですね。中には繊細すぎて、トレーニングの時点で辞めていく人もいます。

Q8:傷ついた人々と、どう接すればいいですか?
A8:相手の気持ちを肯定してあげてください。ホットラインにかけてくる大勢の人々が、絶望や不安と闘っています。彼らは、自分だけが変なのではなく、他の人も同様の感情を抱いていると確かめたいんです。

Q9:忙しい時間帯はいつですか?
A9:平日の午後6時〜10時と休日の午後11時〜午前3時が、最も忙しいです。

Q10:どういった理由が、人々の自殺を思いとどませるんですか?
A10:人によって違います。私が話したある女性は、3人の子供のために自殺を思いとどまりました。またある男性は、自分が育てているサボテンを枯らさないために、生きる道を選びました。人によって、全然違うんです。

Q11:相手に言ってはいけない言葉などありますか?
A11:マニュアルでは、「分かります」という言葉はなるべく避けるように定められています。なぜなら、私たちは相手のことを何一つ知らないからです。相手がどのような人生を送ってきたのか、全く分かりません。「分かります」なんて言ったら、「お前になにが分かるんだ!」と相手の反発心を招きかねません。

私たちにできるのは相手に寄り添って、「自分が抱えているのは、普通の感情なんだ」と実感してもらうことだと感じています。

Q12:1日にどれくらい電話がかかってくるんですか? また、今すぐ自殺しそうな “とっても深刻” な電話の頻度は?
A12:私は1回3時間のシフトに入っていますが、“とっても深刻” な電話が2〜3本。“普通の状態” でかけられてくる電話が4〜5本といった感じですね。

Q13:イタズラ電話ってかかってきますか?
A13:1日に1〜2本くらいかかってきます。その大半が、子供や若い人たちが、友人と一緒にやっているようです。イタズラ電話だと分かった時点で電話を切りますが、ある時は20分間も会話をしていたことがあります。

イタズラ電話は、とても嫌なものです。怒りすらこみ上げてきます。でも「そちらにスタッフを派遣しますね」と言えば、相手はバレるのを恐れてあわてて電話を切るんですよ。

Q14:「自殺する」と言うだけの人もいますよね? そういう人にイライラしますか?
A14:私はそうではありませんが、イライラしてしまう相談員もいるかもしれませんね。でも私たちは、どの電話も真剣に対応します。

Q15:「自殺することは、“痛み” をとめるのではなく、やり過ごすだけ」という言葉を聞いたことがあります。この言葉についてどう思われますか?
A15:複雑ですね。自殺する人間の人生・精神で何が起こっているのか、誰にも分かりません。心の痛みは、肉体の痛みと同じくらい、もしくはそれ以上に癒すことが難しいと言えます。

でも親しい誰かに自殺された人間は、その人自身も自殺してしまうリスクがすごく高くなります。私は「自殺=自分勝手な選択」だとは思いませんが、愛する人に深刻な影響を与えるということは断言できます。

……さらなる質疑応答は、次ページ(その2)へ!

参照元:Reddit [1][2]Imgur(英語)
執筆:小千谷サチ
Photo:RocketNews24