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レンタルバイクでハノイの町をラッタッターッとツーリング中、なんとなく横を見た私はある建物に目が釘付け! すんでのところで事故りそうになった。

薄暗い建物の開けっ放しの玄関から、どこかで見覚えのある大型ゲーム筐体が顔を覗かせていた。慌ててスピードを落とし近づいてみると、そこはゲームセンターのように見える、なんだか不思議な施設だった。

ゲーセンではなく、ゲーセンのように見えた……のにはわけがある。私もいい大人だ。只のゲーセンごときで、わざわざバイクを停めて近寄ったりはしない。だけどこの店、私が今までの人生で見たどんなゲーセンにも増して変だった……のよね。

・オーイッ! 誰かいないかあああ!

そこらの学校の体育館がちっこく見えるくらい広々とした建物。そこにざっと60台以上の筐体が勢揃いしている。大型筐体もいっぱい。ただ、広すぎるからか、筐体と筐体の間隔が異常に広く、がらんとしている。

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んでもって、場内の蛍光灯がフル点灯してるって言うのに、やけに薄暗い。ゲームセンターってそもそも薄暗いところなのだけど、演出された暗さではなく素で暗い……。

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なにより謎なのは、電源の入った筐体がひとっつも、ただのひとつも無いのだ。写真を見ていただければ分かる通り、全部電源オフなのである!

・店員はテレビに夢中で目も合わせてくれなかった

広々としたゲーセン(?)。客は私しかいないが、店員は二人いた。片方はむちゃくちゃ広いホールの真ん中にあるカウンターに突っ伏し、具合が悪そうだった。

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私と絶対目を合わさないもう片方は、パイプ椅子に腰掛け、アウトランナーズ(セガ)の筐体のてっぺんにある、古びたブラウン管テレビをぼんやり眺めていた。そう、このゲーセンで唯一電源の入ったエレクトロニクス機器が、何を隠そうこの小さなテレビだった。

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うすぼんやりした蛍光灯に照らされた、誰もいないゲームセンター。廃墟と思いきや店員はいるが、そいつは私を完全シカトしている。なんなんだ。なんなんだここは……。

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ひょっとして閉店してるのか? と思った私は、翌日懲りずにもう一回行ってみた。真っ昼間だがやはり客は一人もおらず、電源の入った筐体もひとつとしてない。

カウンターには昨夜の店員がいた。今日も私と話したくなさそうなので、カウンター正面にズバーンと貼られた、いかにも無許可くさいソニックイラスト付きのベトナム語・英語の注意書きを読んでみた……。当たり前の事しか書いてない。それはどうでもいいとして、びっくりしたのがこの店の名前である。

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・セガの直営店!? マジで!

看板のラストには堂々「セガ・ハノイ」と記されていた。冗談かと思いきや、思えば店内に置かれたゲームは全てセガの作品。もしもこの閑散とした幽霊屋敷的ゲーセンが直営とすれば、横のソニックイラストもオフィシャルということになる。

それにしても、何故に筐体の電源が全てオフなのか。節電なのか? 頼めば電源入れてくれるのか? 入れてくれるにしても、何のゲームかわからないのだが……。日本に帰ったら、セガに確認してみよう。

Report : クーロン黒沢
Photo : Rocketnews24.

▼偶然見つけた、謎の建物
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▼外にはゲーセンであることを示すパネルが
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▼なんか、殺風景なんだよな
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▼掃除は行き届いているようだ
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▼空間を贅沢に使用したレイアウト
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▼電源消されると、何のゲームかわかんないんだよね
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▼実は博物館だったりして?
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▼首をひねって出たはいいが、気になって次の日もう一回行ってみた
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▼目を合わせてくれない店員の前に、注意書きのパネルが!
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▼今でも信じられない。だから確認するまで断言はしないが……。
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