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春から夏にかけて新規店舗の開店が相次ぐ。今年は特に新しいお店を取材しているのだが、お客さんが殺到するのは仕方がないとして、段取りがなってない店が多い! そりゃ行列になるわ。準備不十分、というか「オーダーが殺到することを想定してオペレーションしてないんか?」と思うようなことに遭遇することばかり。

初日はお店にとって、もっとも効果的にプロモーションできる日だというのに、初日にして「2度と来るか!」と思わせてしまうお店が多い。そこで、開店初日の問題点と対策について、考えてみたいと思う。

・レジは必ず壊れると思え!

体制の不備から指摘したいところだが、いろいろなお店に行くと必ず起きる問題があるので、そこから話をしよう。いいか、新規開業店にこれから配属されるであろう諸君。レジは壊れると思え! 絶対だ!! 絶対に壊れる。どうせ事前にオペレーションするなら、「壊れたレジを直す」という項目も追加しておけ。

このことのために、ただでさえ長い行列が、さらに長くなる。そろばんで計算するくらいの気構えを持っていて欲しい。レジに管理されるな、レジを管理しろ。タブレットで会計をしていて、おかしなことになって手も足も出ないというシチュエーションを見飽きた。

・幹部は引っ込んでいろ!

現場を混乱させる要素に、幹部の存在がある。関係者にいい顔をするだけの役立たずは不要だ。邪魔だ。もっとも悪いパターンが、現場で必死になっているスタッフをその場でダメ出しすることだ。客から見てても気分が悪い。お前がダメ出ししている間にも、客は待っている。そしてダメ出しされたスタッフのテンションはダダ下がりになって、さらに悪循環。

いいか、幹部は引っ込んでいろ。1ミリも客のためになってない。せめて長時間待つ客前で、1発芸でもしてみせろ。

・オープニング記念のセットを用意しておけ、できれば1000円か500円で

開店初日というのはかなり特殊な状況だ。お店が物珍しければ、どんな商品だって大量に購入される。例を挙げるとドーナツだ。ドーナツはウマいかマズイかに関係なく、全種類購入する客がゴロゴロいる。したがって、いちいちオーダーを取ること自体が無駄になる。

そこで「オープニング記念セット」と称して、一通り品数が揃ったセットを用意しておくべきだ。これを1000円とか500円とか、釣りが要らないようにしておく。そしてバラバラにオーダーしたい人とは別の列で、ガンガン回していくんだ。それだけでスタッフの負担が減るだけでなく、停滞している行列が周り出して、店の売り上げにも貢献できる。

こんな単純なことを考えるお店がひとつもない。そのため、ひたすら待たされる客は不満を募らせて、この日を最後に2度と店に来なくなる。

・子どもや高齢者は極端に優遇すべき

長時間外に立っているのは、オッサンの私(佐藤)でもキツイときがある。それが幼児や高齢者だったらどうだろうか。その辛さはオッサンの比ではないはずだ。客でもそのくらいのことはわかる。だから子どもや高齢者は優遇すべきである。

それも、できるだけ極端に優遇していいと思う。「このお店は子どもや高齢者に優しい」とわかれば、自分の辛さもいくぶん和らぐし、快く待てるからだ。それさえもわからないお店が多い。

いい気で開店ムードに浸っている関係者を即刻店内から排除して、これらの人を入れるべきだ。誰だかわからないが偉そうにしている人を、各所で見かける。関係者なのか、幹部に軽い挨拶をして、割り込んでくる輩さえいる。そういう人にこそ、本来は遠慮してもらうべきだ。なぜならば、初日こそが一番のプロモーションだからだ。

・初日こそマニュアルを忘れるべき

繰り返しになるが、開店初日は特殊だ。この日を境にして、自動的に売り上げが下がる。当たり前だ。毎日1000人の行列が出来るわけがない。それなのに、頑なにマニュアルを貫こうとするお店がある。

「毎日1000人迎える」、その心積もりは良し! だが、もう来ない。仮に来たとしても、初日に1000人さばけないのなら、そのマニュアルは1000人を裁くように出来ていないはずだ。

絶対にマニュアル通りには行かないのだから、初日は忘れろ。反省は後日でも出来る。今日この日に不快な思いをした客は二度と来ない。だからマニュアルを離れて臨機応変に対応すべきである。仮にその場にいる幹部がイヤな顔をしたってイイじゃないか。ロクな店じゃないとわかったら、その日で辞めてしまえ。どうせ初日なんだから。

とにかく私が気になるのは、一番宣伝になる日を、うまく宣伝に生かせないお店が多いことだ。現場の状況は混乱しているかもしれない。しかし、そのなかでも快く客を迎える工夫はできるはず。どうせ開店するなら、末永く続く店にして欲しい。そのためにも現場のスタッフはもちろん、偉いさんたちはスタッフに配慮してあげて欲しいと切に願う。

執筆:佐藤英典
イラスト:Rocketnews24.