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2015年3月7日、一部のメディアに掲載された情報で興味深いものがあった。それは、東京都が東京メトロ有楽町線・都営大江戸線など計5路線の延伸・新設に関し、「整備効果が高いことが見込まれる」とする中間報告をまとめた、というもの。

しかし、一口に「整備効果が高いことが見込まれる」と言われても、いまいちピンと来ない人もいるのではないだろうか? 具体的に現在、何がどういう状況であり、近いうちに、この5路線のどれかの整備が実現されるのか? かくいう私もよくわからなかったので、調べてわかりやすくまとめてみた。

・『整備効果の高い5路線』って何?

まず、今回示された見解が一体何かというと……、「(都市整備局)が、(国土交通省)に対し、都内の “ある5つの路線” を、優先して整備すべきだという意見を示した」ということである。

というのも国は現在、平成28年(2016年)からの15年間の整備指針となる基本計画を策定中であり、本年度中に新たな鉄道整備計画をまとめる予定なのだ。今回は、それに対し「都の意見」を示したというもの。

・整備効果の高い5路線

国土交通省が次に着手すべき鉄道整備を検討するにあたり、都が整備を優先すべき路線として示した「整備効果が高いことが見込まれる5路線」は以下の通り。

【JR東日本羽田空港アクセス線】 田町(港区)など〜羽田空港(大田区)新規
【東京メトロ有楽町線(東京8号線)】 豊洲〜住吉 (共に江東区)延伸
【都営大江戸線(東京12号線)】 光が丘〜大泉学園(共に練馬区)延伸
【多摩都市モノレール】 上北台(東大和市)〜箱根ケ崎(瑞穂町)延伸
【多摩都市モノレール】 多摩センター駅(多摩市)〜町田(町田市)延伸

※延伸(えんしん):鉄道を延長し、駅を増やすこと。

・5路線どの鉄道もまだ着工していない

だが、最も重要なのは、いずれの路線も、まだ着工していない……というか、着工すら未確定であるということ。先にも述べた通り、今回は、東京都が国土交通省への提案のなかでまとめた見解にすぎないのだ。この中から果たしていくつの路線が着工に結びつくのかは、正直まだ誰にもわからない。

場合によっては、本年度の審議会で結審されない可能性だってあるのだ。実際、羽田アクセス線以外の4路線は、2000年にすでに「平成27年度(2015年)までに整備着工することが適当である線」と示されているが、いまだ未着手というのが現状である。

・開通するには着工から数年〜十数年かかる

例えば練馬区には、延伸する際の新駅予定地としてすでに区に確保されている緑地がある。仮にまもなくの審議会で延伸が決まったとしても、そこから着工、開通に至るには少なくとも6〜7年はかかるであろうという見方が強い。

また、多摩都市モノレールを延伸するためには、線路の導入空間として新青梅街道が最も適しているが、実際に線路を建設するには、まず新青梅街道の拡幅工事が必要となる。そういった現状を鑑みると、延伸が決まったとしても、着工、開通に至るには少なくとも10〜20年はかかるであろうという見方もある。

ちなみにJRに関しては、「2020年の東京オリンピックまでに『羽田空港アクセス線』を一部区間で暫定的に開業する計画を断念した」と、先日報じられている。仮に今回着工が確定したとしても、オリンピック開幕までに開通させることは困難と判断したものと思われる。

・立ち退きによる道路整備=鉄道工事着工ではない

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だが、すでに延伸を目標とした道路整備や街づくりに着手・進行中の地域があるのも事実。ただし、ここも勘違いしてはいけないのが「すでに鉄道工事中」ではないということ。

実際に、上記5路線の該当箇所に住んでいる住民の中には、「民家の立ち退きや、道路整備が進んでいる。これはすでに同時進行で地下鉄工事も行われているのだろう」と思っている人も少なからず存在する。かくいう私もそう思っていたし、実際、いくら近所とはいえ工事の詳しい内容などあまり気に留めないひとだっている。

そこへ突如、近所に新駅予定地が設けられ、看板が立ったり、大規模な立ち退きの動きがあれば、「近い将来新たな駅ができる!」と期待してしまうかもしれない。住宅購入の検討などにも大きく影響する要素でもある。
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では、なぜ5路線は「整備効果が高いことが見込まれる」のだろうか?次ページ(その2)にて述べたいと思う。

Report:DEBUNEKO
Photo:RocketNews24.