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人間誰しも、人に言わないだけで『自分の入場曲』が1曲や2曲あるに違いない。自分の名前がコールされ、大観衆の歓声を背中で受けながら歩く花道……。目がくらむほどのスポットライトの中、爆音で鳴り響く入場曲のチョイスは、センスや人格までもが問われる超重要課題である。

そこで今回は万が一のために備えて、「自分の入場曲を選ぶポイント」についてお伝えしたい。これさえ読めば、いざ “その時” がやってきても慌てることは無いだろう。──その時がやって来るかどうかはわからないが

・入場曲は自分のためだけのものにあらず

まず曲を選ぶにあたり、「入場曲は自分のためだけに存在しない」ことを肝に銘じてほしい。もちろん自分のテンションを引き上げる効果もあるが、観客のボルテージを最大限に高め、会場を “自分色” に染める要素があることを忘れてはならない。つまり入場曲とは、自分のものでもあり、オーディエンスのためのものでもあるのだ。

曲調であるが、基本的にスローテンポなものは避けた方がいい。特に若手時代はスローテンポな曲は超NGだ。フレッシュさがウリのルーキーがスローテンポな曲だと、観客が感情移入しづらい。若手時代は、「疾走感」のある曲をチョイスしたほうが無難だ。

ただし、それなりの大物になったら、スローテンポな曲も効果的だ。例えばプロレスラー、ランディ・サベージの「威風堂々」や、藤原喜明の「ワルキューレの騎行」は、曲がかかると同時に会場がその選手一色に染まるほどの効果がある。これはベテランが醸し出す重厚感とマッチしているからであり、若手には真似できない芸当である。

・「仕掛け」の早い曲が理想

では、「テンポの早い曲なら何でもいいのか?」と言われればそうでもない。注意したいのは、「曲のどの部分から盛り上がるのか?」ということ。いくらテンポが良くて盛り上がる曲でも、5分過ぎてから盛り上がっても意味がない。その頃には入場も終わっているし、仮にそれまで入場しなかったら観客がしびれを切らすからだ。

理想的なのは、曲がかかった直後から盛り上がる曲……つまり、“仕掛け” の早い曲である。長州力の「パワーホール」、スタン・ハンセンの「サンライズ」、橋本真也の「爆勝宣言」、三沢光晴の「スパルタンX」などは、“仕掛け” の早さが超一流で、観客のハートを一発で射抜く名曲といえる。だがしかし……! これらの名曲でさえ満点はつけられない。

・完璧な入場曲に必要な要素

それでは、100点満点の入場曲に必要なものは何なのか……? ズバリ、「ため」である! 名前がコールされてから、マックスに盛り上がるまでの間にわずかな「ため」があることにより、入場曲は完璧なものになるのだ。この「ため」が長いと観客の緊張感はなくなるし、短すぎるとチグハグな印象になるので、非常に難しい要素といえよう。

この完璧な入場曲を一時期使用していたのが、プロレスラー・蝶野正洋である。蝶野の「CRASH」は先に挙げた曲同様、序盤から盛り上がる名曲なのだが、かつて使用していた「nWo CRASH」はまさに完璧であった。印象的なメロディに入る前のイントロが観客を引きつけ、一気に解放される様は、“神曲” の域に達していたと言ってもいいだろう。

最後に最も重要なことは、「同じ曲を長く使う」ということである。冒頭で述べたように、入場曲は自分だけのものではない。曲が自分の一部になるまで根気強く使い続けることによって、観客とその入場曲を共有できるのだ。コロコロ入場曲を変えるのはご法度である。いざ “そのとき” のために、参考になれば幸いだ。

執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.

▼蝶野正洋の「CRASH」だ。めちゃめちゃカッコいい名曲ではあるが、神曲ではない。

▼こちらが、神曲「nWo CRASH」だ! イントロ部分の「ため」が絶妙!!

▼ランディ・サベージの「威風堂々」は、大物だけに許される名曲だ。

▼藤原喜明の「ワルキューレの騎行」は、使い続けて自分のモノにした一曲。

▼長州力の「パワーホール」の仕掛けの早さは超一流。

▼スタン・ハンセンの「サンライズ」はテレビなどでもよく使われているぞ。

▼ちなみにこれがサンライズの原曲だ! スペクトラムかっこいい!!

▼橋本真也の「爆勝宣言」は、観客が「ハッシモト! ハッシモト!」とコールしやすいのもイイ。

▼三沢光晴の「スパルタンX」も長く使い続け、根付いた名曲。仕掛けも早い。

▼文中では紹介しきれなかったが、川田利明の「Holy War」も名曲だ。

▼ターザン後藤の「汚れた英雄」もカッコいい!

安生洋二の入場シーンも神!