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あなたは、よくサーカスを見に行かれるだろうか? 「サーカスに毎月行ってます!」というような人はきっと少数派なのでは……なんて勝手に想像する。愉快なはずなのに、どことない切なさが漂う。それがサーカスだ。

そんなサーカスが、大きな変化に直面しているようだ。なんと、花形ともいえる象が、サーカスから消える日がやってくるというのである。どのような背景が、『象の完全引退』を後押ししたのだろうか?

・有名な米サーカス団の決断

19世紀から米国で興行を開始した「リングリング・ブラザーズ・アンド・バーナム・アンド・ベイリー・サーカス」。“世界最大のショー” とも名高く、特に動物の曲芸が有名なのだとか。もちろん象だって、お絵かきをしたり、組体操をやったり、前の象の尻尾を鼻でつかんで行進をしたりと、色々な曲芸で観客を楽しませている。

しかし今回、このサーカス団が「象のサーカスへの起用を、2018年までに取りやめる」と宣言したのだ。なぜだろう?

・「動物虐待」だとの非難の高まり

まず、“象の調教” に対して「動物虐待だ!」と非難する声が高まっていることが挙げられる。今回の「引退宣言」以前にも、動物の曲芸がすでに制限されている米の一部の地域では、当サーカス団も象の曲芸を控えてきたのだとか。

またサーカス団は、「時代と共に人々の好みが変化し、象の曲芸を快く思わない観客が増加した」とも話している。他にも、『動物の倫理的扱いを求める人々の会』のイングリッド・ニューカーク代表は、サーカスの多くの象が関節炎や結核を患っているので、曲芸をやらせるべきではないと主張している。

・多くの動物愛護団体から賛同の声が

さて、今回のサーカス団の決定に、多くの動物愛護団体が賛同の声を寄せている。例えば、米国動物愛護協会は「大変素晴らしい」と、国際動物福祉基金は「正しい決断に向けた、大きな一歩」との声明を発表。

しかし中には「象の曲芸を、直ちにやめるべきだ。なぜ3年も待たなければならないんだ」という声も聞かれる。確かに、2015年の今回の発表から、実際に象たちが引退する2018年まで3年間ある。

・なぜ3年待たなければならないのか?

サーカス団の説明によれば、この3年間で、団体は象のための保護施設を整備する予定だという。米フロリダ州の200エーカー(約80万平方メートル)の敷地に、施設が建設されるということだ。

長年、当サーカス団のポスターには、象が起用されてきたことからも、象がいかに重要な役割を担ってきたかが伺える。「100年以上もの間、 “地上最大のショー” を行うサーカス団としてやってこれたのは、象のおかげ」ともサーカス団は述べ、改めて象に対する虐待を否定している。

・トラや馬などは引退しない

それでは、「トラや犬、馬など、他の動物たちも象と一緒に引退するのだろうか?」なんて疑問も浮かぶが、今のところは象の引退が発表されたのみ。他の動物の曲芸は、継続されるようだ。また象の引退は、当サーカス団だけなので、他のサーカスでは象の曲芸が続けられる。

確かに、象の大きな体を見ていると落ち着くし、曲芸だって興味深い。象がサーカスから姿を消すと、きっと寂しさを覚えることだろう。しかし、象が “虐待” されているなら話は別だ……。ということで、様々な想いが人間側に渦巻きそうな予感。あなたはどう思われるだろうか?

参照元:Associated PressYouTube (英語)
執筆:小千谷サチ 

▼確かに、象の曲芸は興味深いのだが……