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以前の記事で、金沢を目指してフェリーでの船旅を実践したことをお伝えした。茨城県大洗港を出港し、苫小牧でフェリーを乗り継ぎ、福井県敦賀港に入港し、そこから特急サンダーバードで金沢入りした訳だが、乗船時間はトータルで40時間にもおよんだ。

その間、船中で2泊。2度の夜を体験したのである。陸地はおろか光も見えない真っ暗闇の太平洋と日本海の様子をお伝えしたいと思う。

・船内は快適

船中の滞在状況については、すでに以前の記事でお伝えした通りだ。船内設備は大変充実しており、飲食に困ることはなく、またゲームセンターや映画上映設備を備えた船もあり、10時間を越える航行時間を費やすのに、困ることもない。

・日中は海を見ることができるのだが……

海上は何もないとはいえ、日中は海を眺めながらさまざまなことに思いを馳せることができるだろう。しかし夜になると、見えていたはずの海さえも、真っ暗な闇のなかに没してしまい、空と海との境目もわからないほどになってしまう。はたして、そこが海であったことさえも忘れてしまうような暗闇だ。

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・音と揺れだけが教えてくれる

ザブンザブンと波打つ音と、規則的あるいは不規則的な船の揺れだけが、そこを海だと証明してくれる。視覚的に「海」を感じられなくなってしまうのである。その暗闇を見つめていると、妙な感覚に陥る。見つめているからこそ、「海」だと証明されていた。それがない。では私(佐藤)は何を見つめているのか? そんな奇妙な疑問が頭をよぎる。

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・想像が何かを生み出す

するとまるで睡眠中の夢のなかのように、自分の内側から何か相応しいものを見つけて、自分の視界に投影しようとし始めるのだ。見知った何か、いや見知らぬ何かさえ、自分の想像の世界から引きずり出されて、眼前に浮かんでは消えていく。ここはどこだったのか。音と揺れは「海だ」と言っている。だが見えているものは、得体の知れない何か……。

夜の海は、際限のない想像を許容している。しかし私はその行き着く果てのない、無限の許容を前にして怖気づき、果てなき世界を拒絶している。闇夜の海はどこまで深く彼方にある……。

Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24

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