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季節は秋。朝夕は寒くなって、布団から出るのも億劫になってしまう。そんな時こそ扇風機に注目すべきであると、扇風機評論家の星野祐毅氏は語る。今回はいつにも増してアツい扇風機愛が炸裂している。涼しさが売りの扇風機をアツくアツく星野氏の扇風機哲学をお伝えしたい。以下は星野氏による文章だ。

11月も半ばを迎え、めっきり寒さも増してきた今日この頃。そろそろマフラーや手袋が恋しい季節である。実はそんないま「だからこそ」、扇風機を買うべきなのだ。なぜか? 以下に、いまこそ扇風機を買うべき重大な理由をご説明しよう。

・あこがれのあの名機が、こんな値段で!

いまだからこそ買う理由。それは「型落ち品を安く買える」、「暖房をもっと効果的に使える = 暖房代が安くなる」。とりあえずここでは、型落ち品にフォーカスしたいと思う。型落ち品を買えるということはつまり、「アコガレのあの機種を安く買える!」ということになる。

・欲しくても買えない高級機種

アコガレを抱く製品は、とりもなおさず高嶺の花だ。とてもじゃないが手が出ない、でも欲しい! どのジャンルにもそんな製品があるはずである。欲しい! 狂おしいほど欲しい! しかし、財布の中身を見てみると……

・後継機種の存在

たとえばカメラ。リコーペンタックスの中盤カメラ「PENTAX 645D」を例にとると、ほかに比べるべき対象がないこともあり、長らく75万円くらいから値が下がらなかった。とてつもなく「イイ絵」を吐き出す、プロも使ってる。そんなこと抜きにして、とにかくカッチョいい。でも高い、でも欲しい。

それが……後継機種である「PENTAX 645Z」の登場とともに、みるみる値段は下がり、絶頂期より約31万円も低い44万5000円で購入できるようになった。ほぼ半値ではないか! スバらしい!

まあ、ここまで行くと「ロケットが10億円から1億円に値下げしました! コレは驚愕! → すげえ破格なのはわかるけど買えるはずねーよ」と同レベルかもしれないが、まあモノのたとえである。

・三洋がパナソニックに買収される時に

これは、自動車や高級オーディオにも言えるのではないか。「憧れだった、あの機種」が、何らかの要因により一気に値崩れすることがある。この現場に居合わせると、なんとも幸せなことになるのだ。

筆者はたしか3年前、ちょうど三洋電機がパナソニックに買収されてブランドが消滅すると言う端境期に、欲しいなぁ、でもやっぱり贅沢かなぁ、と躊躇していた炊飯ジャー「踊り炊き」を、それまで3万5000円くらいしていたものを、税込1万円ポッキリで購入したのであった。

・値下がりする要因

「三洋」のロゴマークが刻印された商品を一刻も早くサバいてしまいたいヨドバシカメラの思惑と、むしろ三洋のロゴが入ったジャーが欲しい筆者の思惑が、奇跡的にランデヴーした幸せな結末であった。ひるがえって、扇風機。コイツが値下がりする要因、それは「季節」と「型落ち」である

・気温の低下に追従するように値下がり

メーカー各社は、扇風機をサーキュレーターとして利用することを促し、通年売れる商品に仕立て上げたいようだが、そうは問屋がおろさずに価格はグングン下がるのだ。たとえばツインバード社の「コアンダエア EF-D9」という機種があり、独自の羽根の構造と高性能モーターで、まさに縁側を吹き抜けるそよ風のような微風が出るのだが、夏の頃は2万円は下らなかった。ヨドバシでもヤマダでも、だいたい2万3000円くらいした。

それが! 価格ドットコムを見てみると……。なんと1万2000円で買えるのだ! 今なら!

・現行製品の陳腐化

毎年新製品を出さねばならないと言うプレッシャー。ライバルは今年よりかなりスゴいのを出して来ると言うプレッシャー。各メーカーにはそんなものがあって、それはなにを生み出すかと言うと、つまりは現行製品の陳腐化だ。

最近、クルマのデザインについてのマーケティングをしている方に、話を聞く機会があったのだが、いわく「前のモデルが凡庸で、見るに耐えないような『キモチ』にさせなければ負けだ」とのこと。しかし! 性能はそこまで変わらないわけで、むしろ奇抜な新型より好きなデザインの旧型の方がよいということも多分にある。

扇風機もそこなのだ。羽根の形状、モーターの消費電力。これらは、今時点では行き着くところまで行っている気がする。

・未来の話はあと!

しかし! たとえばSHARPの研究所が、アサギマダラチョウやアホウドリの研究を続ける以上……。たとえばツインバードがアンリコアンダ博士の学説に追加事項を付け加え続ける以上……扇風機の進歩は止まらない。もっともっとすさまじい羽根が出て、もっともっと消費電力は下がるだろう。

だからこそ。あえてこそ、型落ちを今買うべきなのだ。安くなっているから。未来の話は、そのあとで語ろう。いまは2014年の、平成26年の技術に酔いしれられる、最後のチャンスなのだ。

・オススメの段階ではない!

あたらしい技術にココロ奪われて、どうしても欲しいと思ったなら、それが買い時なので大いに買えばいいと思う。しかし実用に供するならば、必要十分にしてすさまじい機種が、数がハケないからと投げ売り価格。これは買うしかない!

もはや「オススメの」とか言う段階ではない。家電量販店に行ってみても、もはや扇風機はひっそりと1、2機種がフロアの隅に、無造作に押し込められているだけだ。そこで、Amazonや価格ドットコムの出番となる。そんななかから、好きなのを買えばいいと思う。

そう……冬こそ扇風機を買おう! 暖房とどう組み合わせて使うのか? どうすれば電気代が浮くのか? 次回は、それにお答えしようと思う。

執筆:扇風機評論家 星野祐毅
Photo:Rocketnews24

▼いまや量販店でも、片隅の片隅に2、3台しか置かれていない扇風機。これが、通販サイトだと格安で販売されているのだ
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