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猛烈な勢いを保ったまま北上を続ける台風19号(名称ヴォンフォン)。2014年10月13日に九州南部に接近し、13~14日にかけて西日本から東日本へと縦断するものと思われる。台風18号も各地で甚大な被害をもたらしているので、今回も十分な注意が必要だ。

特にドライバーは道路が冠水した場合に要注意。18号の時に車を水没させてしまった現役ミュージシャン具志堅巨樹さんの経験が参考になるので お伝えしよう。彼は神奈川県川崎市で車が水没。結局その車は廃車となったのだが、本来は廃車を避けることができたそうだ。もしも車が水没したら、彼の意見が参考になるかもしれない。

・引き返すことができずに冠水した道路へ

台風18号がもたらした大雨の影響により、横浜市では各所で道路が冠水していた。川崎市でも同様に複数の道路が水浸しになっていたようである。具志堅さんは不運にもその道路を走行していたようである。後続車が続く道路上で、引き返すこともできずに冠水した道路に侵入してしまった。そしてすぐに車は動かなくなってしまったのだ。

「警察官が遠くに見えたので、呼ぼうと思ってドア開けたら水がドワーっと入ってきて。しかも対向車がダンプカーで、猛スピードですれ違った際にビッグウェーブが来まして。それから警察の方に押してもらい、すぐそばの道路にとりあえず避難したものの、呆然として。とりあえず兄が近くにいたので電話しました」(具志堅さん談)

──と当時の状況を説明している。実はこの時、後続車に友人がいて車まで駆けつけてくれたそうだ。そして2人ですぐ近くのファミリーレストランに車を退避させることを思い立った。その友人というのは、セックスマシンガンズのメンバー、SHINGO☆さんである。彼は具志堅さんと「B-SHOP」というバンドで、この水没する1日前にライブを行っていた。なんという偶然の巡り合わせ。

「シンゴに後ろから押してもらい、ノロノロ走っていると途中で通りかかったおばさんが手伝ってくれて。それを見た知らないおじさんが2人ぐらい来て後ろから押してくれて。最終的には5人ぐらいに押されてジョナサンに入店しました」(具志堅さん談)

・無理やりエンジンをかけた

車を移動できたことでホッとした2人は、具志堅さんのお兄さんが助けにくるまでの間、のんびりと食事をしていた。この時に車はまだ壊れていなかったのだが、この後の対処がまずかったのである。車のエンジンはかからない状態だったのだが、お兄さんが来たところでバッテリーをチャージして強制的にエンジンをかけてしまった。これがマズかった。

「後で分かったんですが、これが命取りでした。水没した時はエンジンかけちゃいけないそうです。エンジンに水が逆流して、空気を圧縮するコンロッドという棒が水を圧縮しようとして折れるそうです。結果、エンジンは掛かったんですが、エンジンからカコーン! カコーン! という得体の知れない音……。エンジンオイルはだだ漏れ、マフラーからは大量の水と白い煙……」(具志堅さん談)

・コンロッドが折れた

コンロッドとはエンジン内部でピストンとクランクをつなぐ棒である。エンジンが壊れたと考えて良いだろう。その結果、廃車となってしまった。したがって、車が水没した場合には、無理にエンジンをかけてはいけない。そもそも水没した時点で、車の寿命は相当削られたに違いないのだが。

・閉じ込められないように

ちなみに具志堅さんの場合は、容易に車外に脱出できたのだが、車が水没すると水圧でドアが開かなくということも考えられる。水位が深い場所なら、命の危険にさらされる可能性も十分考えられる。

JAFのホームページでは、シートベルトを外してウインドウを開けて、屋根によじ登って脱出すると説明している。場合によってはウインドウを叩き割って、車外に脱出するとのことだ。

いずれにしても、台風19号の影響による大雨が予想されている。ドライバーに限らず、だれもが浸水や がけ崩れなどの危険性を考えて行動した方がよいだろう。

参照元:JAF
執筆:佐藤英典
取材協力:具志堅巨樹

▼水没直後の車内。マットの下は水浸し
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▼車をファミレスの駐車場に退避した直後。事の重大さを1ミリもわかっていない……
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▼のんきにファミレスで食事した後に、助けにきてくれたお兄さんの車でバッテリーをチャージして無理やりエンジン始動。これがまずかった
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▼結局廃車することになってしまった……
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▼レッカー車に引き上げられると、車内から水が
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▼こうして具志堅さんは車とお別れしたのである
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▼ちなみにこれは彼が所属するバンド、ストライクカンパニーの「台風13号」という曲。今回の廃車とは一切関係ない