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「方南町にやたらと怖いお化け屋敷がある」。そんな情報を得たのは、まだ夏が始まる前のことだった。心霊話、怪奇現象が大好物の私(筆者)は、この噂を記憶のノート書き留めた。そして、うだるような日差しになった先日、冷気(霊気?)を味わいに、そのお化け屋敷「オバケン」を訪ねた。

メトロ・方南町駅から徒歩数分。住宅街の一角に立つ何の変哲もない雑居ビルの一階にオバケンはある。現在のオバケンのテーマ「SIX EXITS」と書かれたポスターがなければ、ここがお化け屋敷だと誰も思わないだろう。

・「町をテーマパークに!」でお化け屋敷を

あらかじめ取材の依頼をしてあったので、担当者の吉澤さんが迎えてくれた。吉澤さんは、オバケンチームの一員として現在展開中の「SIX EXITS」のシナリオやストーリーの肝となる動画を作成した人物だ。吉澤さんによるとオバケンチームの本業は映像制作会社なのだが、「町がテーマパークになったら面白い。方南町にないものを作ろう!」ということで、3年前、事務所の一角にお化け屋敷を作ったそうだ。なかなか素敵なアイデアである。

オバケンチームは「やるからには恐怖を突き詰めよう」ということで、本業の映像制作の技術をフル活用したお化け屋敷を作ってきた。「SIX EXITS」は、事務所の一角を離れ、雑居ビルの一階で展開されている。方南町の駅からその雑居ビルまでの道程も、簡単にはたどり着けない設定になっているという凝りようだ。

・サイコスリラー映画「ソウ(Saw)」がモチーフ

「SIX EXITS」は、吉澤さんが好きなサイコスリラー映画「ソウ(Saw)」の世界観がモチーフになっている。映画「ソウ(Saw)」を観たことがある人なら、それだけでゾクゾクしてくるだろう。もちろん映画を知らなくても、楽しめる。詳細は実際に体験してのお楽しみということで明かさないが、テーマを一言で表すなら「脱出」! 

・お化け屋敷×リアル脱出ゲーム

お化け屋敷の中は6つの部屋に分かれていて、各部屋で制限時間内に課題をクリアしなくては次の部屋に進めない。そう、オバケンはお化け屋敷と最近流行のリアル脱出ゲームが掛け合わさった、全く新しいコンセプトのお化け屋敷なのである。しかも、リアル脱出ゲームの課題は謎解きだが、オバケンでは恐怖に対する忍耐力が問われる。だから、何が起こるかを事前に人から聞いたとしても、クリアできるとは限らない。

・最初の部屋でタイムオーバー

ちなみに、僕も体験させてもらったのだが、お恥ずかしいことに最初の部屋でタイムオーバー! 「あれ? 大丈夫ですか?」と部屋に入ってきた吉澤さんの苦笑いが胸に刺さる(笑)。何が起こるのかは秘密だが、冷静さに加えて器用さも必要な課題で、超がつくほど不器用な僕はいきなりつまづいてしまった。だけど、恐らく普通の人にとってはそんなに難しい課題ではない。

・従来のお化け屋敷にはない恐怖感

お情けで次の部屋に入れてもらい、そこはクリア。しかし3番目の部屋で課題をクリアできず、そこでゲームオーバーとなった。私はここで離脱したが、その感想は「新感覚!」。実は私は「お化け屋敷なんて怖くないぜ」という、お化け屋敷側からすると嫌なタイプの人間なのだが、タイムリミットが焦りを誘う状況での映像と音声を駆使した未知の体験に、何度も「ビクッ!!」としてしまった。オバケン、かなり怖い。

「ホラー映画の主人公になった気分を味わえる」という設定で作られたオバケン、メディアや口コミでこれまでにない恐怖体験が広まり、週末には1日150人から200人も訪れるという。地元の小学生、おばけん目当てにわざわざ遠方から来る人、なかには60代の方までいるというから、みんな意外にお化け屋敷好きなのかもしれない。

・クリア率5%、一気にクリアした人は皆無

ちなみに、追加料金を支払えばゲーム―バーになった場所から再スタートできる。せっかくだから最後まで、というお客さんが多いらしく、数千円を費やしてゴールする人もいるそうだ。

それでも、これまでのクリア率は5%で、一気にクリアできた人はまだいない。どれだけ難易度が高いのか、この数字だけでもわかるだろう。途中で泣き出す人もいるそうで、スタートする前に希望を伝えれば「お化け少なめ」にも対応してくれるという。まるでラーメン。ここまでフレキシブルなお化け屋敷も珍しい。

もう8月の終わりだが、「SIX EXITS」はまだしばらく続く。今後、最初の入場料だけで全関門を突破する人は現れるのか? 我こそは! と思う強心臓のツワモノたちよ、オバケンに挑め!

参考リンク:オバケン
Report:川内イオ
Photo:RocketNews24.
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▼方南町の住宅街の一角に突如現れるお化け屋敷「オバケン」
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▼すでにもう怖い
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▼「SIX EXITS」の最初の部屋の様子。私はいきなりここで躓いた
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▼うわああああああああああああ!
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「SIX EXITS」は、五感で恐怖を感じるように作られている
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「SIX EXITS」のシナリオやストーリーの肝となる動画を作成した吉澤さん
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