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歳を重ねると頭が固くなる。音楽の趣味も偏りがちになるので、とりあえず頭を空っぽにしてCD販売店の店員さんのおすすめを素直に聞いてみることにした。手始めにヴィジュアル系バンド専門店でCDを購入した記者(私)は、次にあまり知らない海外のロックを聞いてみることにした。

ロシアでは旧ソビエト時代、音楽や出版は国の独占事業であった。その影響でロックバンドは、地下での活動を余儀なくされていたという。とはいえ、優れた才能を持つアーティストは多数存在しており、他の国に負けない独自の音楽文化を培っているようである。今回はあるお店でオススメされた2組のアーティストの作品を紹介しよう。

・専門店でオススメされた2組のアーティスト

エドゥアルド・アルテミエフ 『THREE ODES』
リトル・トラジェディーズ 『At Nights』

・こんなところに!?

今回のロシアロック探訪も、前回同様に専門店のスタッフに正直に「どれがオススメですか?」と尋ねた。そのお店は雑居ビルの1室にある。こんなところにお店!? と思うような場所にあり、入り口からは海外CDを専門的に扱う雰囲気には見えない。

・少し歪んでる

実はこのお店はプログレッシブの専門店であり、ロシアだけでなく、イタリアを中心にフランス・ギリシャ・スペインなどヨーロッパの音源を多数取り扱っている。ロシアのものが聞きたいと伝えると、スタッフの男性は「ロシアは少し歪んでます」と、率直な意見を聞かせてくれた。そのなかで初心者の私向けのアーティスト2組を紹介してくれたのである。

・エドゥアルド・アルテミエフ

エドゥアルド・アルテミエフは実は世界的に有名な作曲家である。1980年のモスクワ五輪のテーマ曲を手掛けた人物であり、「旧ソビエトの電子音楽の祖」と言われているそうだ。モスクワ文化大学名誉教授であり、差し詰めロシアの坂本龍一と言ったところだろうか。すすめてもらったのは、彼の2001年のアルバム『THREE ODES』。全面にクラシカルなフレーズのシンセサイザーが打ち出されており、組曲的なダイナミックな展開で聞き応えるのある作品だった。洗練された美を感じさせる、美しい旋律が印象的な作品だ。

・リトル・トラジェディーズ

そしてもう1つは2014年にリリースされた、リトル・トラジェディーズの『At Nights』である。お店にあったポップには「不穏なエマーソン・レイク・アンド・パーマー」との説明があった。エマーソン・レイク・アンド・パーマーとは、英国で1970年に結成されたプログレッシブバンドであり、シンセサイザーを導入したバンドである。たしかにその説明の通りに、クラシカルなアプローチをとりながらも、どこかに均整を失った不安定さを感じさせる。

しかし王道といっても良い魅力的なフレーズや展開も多用しており、不安定のなかに安定を見出せるのだ。時折見せる安定感は、ロシアの厳しい冬に見る晴天と言ったところか。

とにかく国が違えば、音楽に限らず文化が培われる背景や風土が異なる。ロシアのロックに、そこはかとなく漂う歪なシンフォニーを見た。

Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24

▼エドゥアルド・アルテミエフ 『THREE ODES』
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▼リトル・トラジェディーズ 『At Nights』
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