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残念なことだが、歳を重ねると頭が固くなるものだ。自分では柔軟なつもりでも、馴染みあるものが正しいと錯覚してしまいがちである。特に音楽の趣味にはその傾向が顕著にあらわれる。「最近の音楽はイマイチだ……」などと決めつけがちである。そこで新しいものをドンドン聞くようにしようと思い立った記者(佐藤)は、専門店の店員さんにオススメを尋ねることにした。

その手始めに、今まであまり積極的に聞いてこなかったヴィジュアル系バンドの専門店を訪ね、店員さんのオススメに従ってCDを購入。今回はインディーズに限定して3つのバンドをすすめてもらった。その3組は以下の通りである。

・専門店でオススメされた3組のバンド

R指定 『青春はリストカット』
グリーヴァ 『生ト死』
LEZARD 『とかげ図鑑』

・丁寧に教えてもらった

専門店に行って、「どれ聞くのが良いですか?」と尋ねるのは正直、申し訳ない気持ちになった。怖いロンゲのお兄さんが出てきて、興味がないなら来るなというプレッシャーをかけられないか、心配したのだが、そのお店のスタッフはとても人当りの柔らかいお2人で、かなり真剣に私の話を聞いてくれた。「どんな感じがお好みですか?」と、まるで洋服屋の店員さんのごとく、私の要望を聞いてくれたのだ。それだけで感動である。

・たくさんの候補のなかからチョイス

どこからどう要望を伝えて良いのかわらなかったので、「普段はハードロック聞いてます。意外と古めの」と、素直に好みを話した。すると、いくつか候補を選んでくれた後に、そのなかからジャケットを見て、上記の3バンドを選んだ次第である。

・10代ならハマった、R指定 『青春はリストカット』

スタッフの1人がいうには、「もしも青春時代にR指定の『青春はリストカット』を聞いていたら、ドハマりしたでしょうね」とのこと。つまり彼は社会人になってから、この作品を聞いたようだ。

たしかに、メロディアスな楽曲とわかり易い歌詞がスッと頭のなかに入ってくる。それでいて、曲の展開がとてもおいしい。1度聞いただけで、歌詞を口ずさめるほどキャッチーだ。私も10代で出会っていたら、ヘビーローテーションしていただろう。

・展開の落差に引き込まれる、グリーヴァ 『生ト死』

次いで、黒地にドクロのイラストが印象的なジャケットの、クリーヴァの『生ト死』。メンバーのルックスはかなりハードで、その姿から激しい楽曲をイメージしていた。たしかに収録曲『僕の自殺理論』は重苦しいリフが繰り返され、雄叫びと呼ぶにふさわしいシャウトが炸裂する。しかしその合間に、メロディアスな展開が垣間見えて、聞いてて飽きることがない。

・ぜひライブを見てみたい、LEZARD 『とかげ図鑑』

3バンドで唯一のフルアルバムだった、LEZARDの『とかげ図鑑』。楽曲全般に言えることなのだが、大変ポップでキャッチー。ギター・ベース共にゴリゴリと硬めの音作りをしているのに、随所においしいキメがあり、畳みかけるような楽曲の展開がキャッチーさを演出している。

バンドがリフで進行しているのに対して、ボーカルのメロディラインは軽やかに流れていく。ダンサブルなナンバーが多く、これはライブで観たら相当楽しいに違いない。時折見せる遊び心に、思わず衝撃を受けた。

・死生観がどうも……

ひとつだけこれは苦手だなと思う点を発見したのだが、いずれのバンドも死生観について歌ってる。誰でも人生で、「生と死」について考えるのだが、それをストーレートにメッセージにされると、思わずうなってしまう。私が歳を重ねて、ストレートなメッセージを受け止められなくなっているためではないだろうか。

とにかく今回、自分にとって新しい音を聞いたことは多いに刺激になった。このお店のスタッフの丁寧な説明は絶妙だったように思う。

執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24

▼R指定 『青春はリストカット』
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▼グリーヴァ 『生ト死』
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▼LEZARD 『とかげ図鑑』
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