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必要なのは、たったひとつのボール!! サッカーは、世界中で最もプレーされている球技のひとつだ。そのサッカーには、様々な起源説があるが、有名なのは「8世紀にイングランドで敵将の首を切り、蹴って勝利を祝ったこと」が挙げられる。しかし、近年、別の説が注目されているのをご存知だろうか?

「サッカーの起源は紀元前、中国の春秋戦国時代に行われた蹴鞠(けまり)」という説である。この説を主張する博物館に FIFA の会長のブラッター氏が認定書を送っていたとのことで、学者が抗議するという事態に陥っているのだ。

・サッカー中国起源説

この「サッカー中国起源説」について、FIFA 会長の認定書を送られたというのは、山東省シ博市の博物館だ。同館によると、サッカーの起源は漫画『封神演義』でお馴染みの太公望が開いた国「斉(紀元前1046年~紀元前386年)」で行われた蹴鞠であるという。

その「蹴鞠」は、羽毛をいっぱいにつめた皮製のボールを手を使わず、足で蹴って穴に入れる遊びだ。世は戦国時代、いつも馬に乗っている軍人にとって「足の鍛錬になる」と人気を博したそうである。

なるほど、サッカーとの共通点もある。この説によると、「蹴鞠」がエジプト、ギリシャ、ローマ、フランスを経由してイギリスに伝わり、今日のサッカーになったということだ。

・FIFA 会長も中国説を認める

サッカーの起源は、イギリスだけでなくイタリアやギリシャ、南米など様々な説がある。中国説もその数ある説のひとつ……かと思いきや!! FIFA会長のブラッター氏が中国の博物館にサッカー起源の認定書を送っていたというのである!

・イギリスの学者は激怒

この件はW杯を目前にして注目を浴びている。そして、サッカー王国・イギリスの学者が激怒! 強烈な不満を表しているという。

たとえば歴史学者のトム・ホランド氏。彼はサッカーの発祥は19世紀のイギリスという立場を取っている。彼によると「モノを蹴って遊ぶのは人類の活動でよく見られることです。世界中の地域で多くの民族が蹴っているでしょう。それだけでサッカーの起源だと言うことはできません」とのこと。

・中国での商業的成功を見据えての発言?

また、『Football’s Dark Side』の著者である英スタッフォードシャー大学のエリス・キャッシュモア教授は「ブラッター会長の誓いは “サッカーを史上最大の商業活動” にすることで、彼はそれに成功しました。しかし、今後、サッカーの商業性を維持するためには新たな “領土” が必要なのです」としている。

「中国こそ次の目標でしょう。土地は広大で、人口も多く、経済もハイスピードに成長、そして国民がスポーツへの関心を示し始めているのです」

・そもそも「サッカーの起源」の定義って……

中国の蹴鞠の歴史は紀元前にさかのぼることができるので年代的にはかなり古い。だが、ホランド氏の指摘のように、モノを蹴っているだけでサッカーと呼ぶことができないというのも理解できる。何をもって「サッカーの起源」とするかの定義が必要なのかもしれない。

・「現代サッカーのルールの起源」ならイギリス

ちなみに、「現代サッカーのルール」という見方をすると、イギリスが起源であると言える。それは1863年のこと、サッカーの統一ルールがないイギリスで、エベニーザー・コブ・モーリー氏がサッカー団体の設立を提案、同年、世界初のサッカー団体「フットボール・アソシエーション」が設立され、その会合で競技規則が制定されたのだ。

この協会は、日本では「イングランドサッカー協会」という名で知られており、協会の設立とルールの制定に大きく貢献したモーリー氏は「サッカーの父」とも呼ばれている。

参照元:ET Today(中国語)、soccerly(英語)
執筆:沢井メグ
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