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「北極点無補給単独徒歩」、冒険から無縁の生活を送る多くの人にとって、このチャレンジは無謀としか思えないものだ。最大50日間をかけて、800キロもの氷の上をひたすらに歩き、途中で補給することなく、北極点を目指すというのだから、無茶というよりほかに表現のしようがない。

その冒険がいよいよ序章を迎えた。チャレンジする荻田泰永氏が日本を飛び立ったのである。2014年2月10日、成田空港から一路カナダ・バンクーバーへと飛び立った。いよいよ挑戦が始まる。改めて実行スケジュールをおさらいすると以下の通りだ。

・荻田氏の北極点到達スケジュール(変更する場合もあり)

2月12~26日 イカルレット(カナダ、フロビッシャー湾の町)でトレーニング、準備(寒冷地訓練)
2月27日 イカルイットからレゾリュート(カナダ最北の村)へ定期便で移動
3月2日 レゾリュートからディスカバリー岬へチャーター機で移動
3月3日 北極点へ向けて歩行開始
4月20日頃 北極点到達。※極点等龍後チャーター機にて極点でピックアップ
4月25日頃 日本帰国

・「不安しかない」

バンクーバーで食料品、装備品の買い出し等を行った後に、イカルレットで寒冷地訓練を行うことになっている。出発当日、成田空港には冒険を支援する関係者と荻田氏のご両親。そして報道関係者が見送りに訪れていた。保安検査場通過前のインタビューで彼は、次のように話していた。

・出発前の荻田氏のコメント

「不安しかないですね。不安が9割。これ以上望めないほどの準備は整えていますけど、相手は自然なので何が起きるのかはわからないです。極地冒険は最初の1週間から10日で成功するかどうかが決まります。『はじめがクライマックス』みたいなところがあるので。前半をどういう風に乗り切れるかにかかっています」

いつものように穏やかに話す荻田氏ではあったが、普段よりもいくぶん緊張しているように見えた。2012年にリタイアしているだけに、今回は成功したいという強い思いへの裏打ちではないだろうか。

・命はひとつ

検査場へ向かう荻田氏に、彼の母親はサッと手を出して固い握手を交わしていた。一方父親は、人差し指をまっすぐに立てて「命はひとつ!」と言葉を送った。それはまるで、『そのことを忘れるな!』と言わんばかりに、気持ちの入った言いようだった。

そう、命はひとつ。どんなに安全を考慮して最善を尽くしても、常に命は危険にさらされた状態にある。そうであればこその冒険なのだが、命はひとつだ。どうか無事に北極点に到達し、日本人で初めてになる快挙を成し遂げてもらいたい。

参考リンク: シューティングスター「荻田泰永 北極点無補給単独徒歩到達への挑戦」、Facebook「荻田泰永 北極点事務局」
Report: 佐藤英典
Photo: RocketNews24

▼成田空港のミーティングポイントで出発前のインタビュー
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▼普段と変わらず穏やかに話す荻田氏ではあるが、言葉の端々に緊張感が漂う
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▼ガッツポーズを決めて、いよいよ出発
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▼母親と固い握手
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▼そして父親からは「命はひとつ」の言葉
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▼これから約1カ月の準備期間を経て、無補給単独徒歩が始まる
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