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恵比寿といえば、シャレおつ。そんなイメージを持っている人が多いだろう。確かに週末にもなれば着飾った男女が街に溢れかえる。合コンの街、美食の街と言われたりもする。しかし! 一歩路地に入れば、そこには別世界が広がっているのだ。

駅から徒歩5分。恵比寿ガーデンプレイスにほど近い住宅街の一角に、それはある。ゲームセンター「あそびば20」。単なる “ゲーセン” ではない。現代では珍しい古参のゲーム機が並び、10円単位から遊べる、昭和の香り漂う “遊技場” なのだ。このレトロゲーセン、はたして100円でどれだけ遊べるのか! これはその検証レポートである。

ジュークボックスのリース業からゲームのリース業へ

「あそびば20」が誕生したのは、今から30年ほど前。もともとジュークボックスのリース業を手がけていた荒巻徳蔵さんが、ガレージを自力で改装してオープンさせた。

「カラオケが人気になってジュークボックスがダメになっちゃったから、ゲームのリースを始めたんだよ。それでここも作ったんだ」と荒巻さん。ちなみにちゃんと営業許可は取ってある。

荒巻さんがかつて扱っていた古いゲームを集めた「あそびば20」には、三十代以上の大人が子どもの頃に遊んだような10円ゲーム(新幹線ゲームなど)、50円ゲーム(パチンコなど)、100円ゲーム(ピンボールなど)、そして年代もののジュークボックス(1曲50円・3曲100円)が鎮座している。

・『あっちむいてホイ』で勝利

まずは、10円ゲームの『あっちむいてホイ』に挑戦した。最初にパンダのキャラとジャンケンで対戦し、勝つと「あっちむいてホイ」で勝負という流れ。ジャンケンと「あっちむいてホイ」、どちらにも勝利を収めると、コイン2枚が得られる。ビギナーズラックか、いきなりどちらの戦いにも勝ち、コイン2枚ゲット!

コインを増やそうと思い、『あっちむいてホイ』の筐体に投入しようとしたが作動しない。すると、「あ、たまに合わないコインあるから、外のゲームで遊んで」と荒巻さん。ユルい! 仕方なく、外に置いてある『フィーバーチャンス』で勝負。こちらは10円とコインで遊べるゲームで、単純に言えばルーレットだ。これであっけなくコイン2枚をロスト……。

・新幹線ゲームで20円ロスト

失意の私(筆者)は、隣りにある『新幹線ゲーム』に流れた。これは、左右にあるピンで10円を弾きながら東京から博多までを目指すもので、博多までいけば景品がもらえる。単純で簡単そうだが、そこが落とし穴。「うちのゲームで一番売り上げが良いんだよ。10円だから気軽にやっちゃうんだろうね、へへ(笑)」と荒巻さん。術中にはまり、ここで20円を失った。無念!

残り70円。フィーバー感を味わいたくて、1回50円のパチンコに挑む。昔、本当にパチンコ屋で使われていた機器らしい。電飾がギラギラ、昔懐かしい電子音楽も流れて、昭和のオヤジになったような気分。左上に点数が表示されており、36点を超えれば景品ゲット! しかし30点でタイムオーバー。「子どものほうが上手いね」と荒巻さん。くぅーーー!

・一人で大盛り上がり

残り20円。チキンな僕は、唯一勝利した『あっちむいてホイ』に戻った。ここで、遊べる時間を取り戻したい! 気合を入れてジャンケンに臨むも、2連敗。あっちむいてホイにもいたらず、僕の100円は終了した。敗北感はあったが、それにしても驚いたのは、自分の盛り上がり(笑) 客は私一人なのだが、「わー!」「あー…」と声まで出して満喫。

時間にして15分ぐらいだっただろうか。私の心は間違いなく「少年時代」に戻っていた。その証拠に、100円チャレンジを終えた私はさらにピンボール(1回100円)をやった後、棒を動かして景品入りカプセルを穴に落とすスーパースコープ(1回50円)を2回もやり、気づけば計300円を投じていた。ちなみに、景品はゼロだった。

・子どもの頃に遊びに来ていたお客さんが自分の子どもをつれて遊びに

この “童心” をエンジョイする人が多いのだろう。お客さんは、子どもより大人が多いそうだ。子どもの頃に遊びに来ていたお客さんが、大人になって自分の子どもを連れてくることもあるという。現在86歳の荒巻さんは、「おじさん、来たよ! って遊びに来てくれるのが嬉しいんだよね。人生の楽しみでやってるんだ」と教えてくれた。

実は以前、月々数万円でガレージを物置として使わせて欲しいというオファーがあったそうだ。遊技場の収入は月1万円程度で、貸したほうが割りは良い。でも、荒巻さんにとっては『あそびば20』でお客さんと接しているほうが「ボケ防止で良いんだよ(笑)」と言う。「好々爺」という言葉そのままの荒巻さん、今日も笑顔で子どもを待ち続けている。

・今回ご紹介した飲食店の詳細データ

店名 あそびば20
住所 東京都渋谷区恵比寿南1-21-22
時間 12:00~18:00
休日 不定休(大雨・強風・体調等による)

Report:川内イオ
Photo:RocketNews24.

▼目印の看板
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▼最初に遊んだ「あっちむいてホイ」(1回10円)
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▼次に遊んだ「フィーバーチャンス」(1回10円)
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▼お店の稼ぎ頭「新幹線ゲーム」(1回10円)
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▼昔、パチンコ屋で実際に使われていたパチンコ台(1回50円)
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▼ピンボール(1回100円)。激レア過ぎて、埼玉や群馬からファンが訪ねてくる
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▼2度挑んで失敗したスーパースコープ(1回50円)
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▼UFOキャッチャー(1回100円)。景品がレアで、マニアが5000円をつぎ込むことも
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▼自慢のジュークボックス。ビートルズ、エルビス・プレスリーなどが聴ける
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