北緯66度33分から北の地域を「北極圏」という。この地域では、夏は白夜で太陽が沈まず、冬は極夜(きょくや)で日照時間わずか2時間になるという。
・サンタ村に北極線が通っている
北極線(北極圏の限界線)が通る国は、意外に多いことをご存じだろうか。フィンランドもその国のひとつ。地方都市ロヴァニエミにも北極線が通っており、サンタクロース村はちょうど北極線がまたがる場所にあるのだ。
・約17時間をかけて北極圏へ
私(佐藤)は、2013年末に日本から約17時間をかけて北極圏にたどり着いた。成田からフィンランドの経由地であるイスタンブールへ、飛行機で12時間。そこからヘルシンキまで約3時間。さらに国内線で約1時間のフライトを繰り返して、ようやくロヴァニエミの街についた。
・暖冬でヘルシンキは暖かい
フィンランドというと、全土が雪に覆われているイメージがあるかもしれないが、そんなことはない。とくに今冬は暖かく、ヘルシンキでは雪が積もっていなかった。タクシードライバーの話では、昨冬はこの時期(12月末)に40センチも積もったそうだ。しかし今年は、どこをどう見ても積もりそうな気配がない。もしかしたらロヴァニエミも暖かいのでは? ところがその考えは見当違いであった。
・一面銀世界の街
ロヴァニエミの空港を降りると、すでに滑走路一面が雪で覆われており、風が肌を刺すように冷たいのだ。ヘルシンキでは道路は路面がむき出しになっていたのに、ここでは路面の見える場所がひとつもない。全面凍結しており、見渡す限りの樹氷。同じフィンランドでもまったく世界が違う。これが北極線が通る街なのか……。
翌日、サンタクロース村を目指してバスに乗った。バスは1時間に1本出ており、所要時間は約30分程度。結構アクセスしやすい場所にあるようだ。観光客で満車のバスに揺られながら、サンタ村にたどり着いた。表には「Santa Claus」(サンタクロース)の看板と並んで、「Arctic Circle」(北極線)と掲げられている。ここではどちらも売りのようである。
・無造作に敷かれた北極線
さて、どこに北極圏の入り口があるのかな? と思い、建物のなかに入ってみると、足元に「66° 33′ 07″」(北緯66度33分7秒)と書かれた太い線を発見。もしかしてこれか? これが北極線? みんなあまり関心のない様子で、線を踏んづけてるけどいいのか? 記念撮影をしている観光客もいるので、やっぱりこれが北極線のようだ。これをまたぐと北極圏ということらしい。
・北極線はただの線だった
どうやら北極圏にたどり着いたようだ。しかし、ただの線に過ぎないので、いまいちピンと来ない。みんな北極圏そっちのけで、サンタクロースの家に向かって行く。そりゃそうだよな、ただの線を見に来るやつはいないよな。サンタの方がワクワクするもん。でも、みんなもうちょっと気にしようよ、北極圏がかわいそうだろ? 多分フィンランドの人がわざわざ北極線のうえにサンタ村を作ったのにさ、それじゃあんまりじゃねえか……。つれねえよな……。
・北極圏到達証明書は現実的な価格
まあ、とにかく北極圏に到達したのである。その証に、ここでは「北極圏到達証明書」というものを売っている。しかもご丁寧に、英語・フィンランド語・フランス語をはじめ、きちんと日本語版もあるのだ。そこにちょちょっとサインしたものが4.2ユーロ(約600円)で売ってるぞ。何だかこの販売価格も、妙に現実味がある観光地価格で、若干興ざめするのだが……。ちなみにこの証明書には、次のように書かれている。
「皆様の今日の、そして将来の成功、発展を祈願します。そして再びラップランドに来られることを希望します」
ご丁寧にありがとうございます。紋切型の文章にちょっとさみしさを感じてしまうのだが、とにかく北極圏に来たぞーー! 600円の北極圏到達証明書を買ったぞーーッ!
Report: 佐藤英典
Photo: Rocketnews24
▼ヘルシンキ空港から1時間かけて北極圏の街ロヴァニエミへ
▼夕方のフライトで、飛行機から見えた夕焼けが美しかった
▼ロヴァニエミに到着。ヘルシンキと打って変わって銀世界
▼出迎えのサンタも凍えてる
▼夜の街の様子
▼ここがサンタクロース村
▼サンタの家の前には、巨大な雪だるま
▼問題の北極線は、入り口の建物に入るとすぐにあった。残念なくらいに普通なただの線……
▼これが北極圏到達証明書。約600円で販売している
▼日本語が丁寧すぎてちょっと興ざめしてしまった……
▼サンタ村を訪れたときの動画