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勝新太郎、愛称「勝新」。1997年6月21日に亡くなってから既に26年が経つが、豪放磊落(ごうほうらいらく)な性格で「俺から遊びを取ったら何も残らない」という名言とともに数々の逸話を残した昭和の大スターの名前を記憶している人も多いだろう。

その勝新さんが愛してやまなかった洋食屋が恵比寿にある。創業32年の老舗『イチバン』だ。勝新さんが通ったというと「高級店?」と思ってしまいそうだが、ノンノンノン。イチバンは地元の人が足しげく通うまさに「古き良き町の洋食屋さん」だ。

・勝新がキャデラックで通った店

イチバンの女将さんによれば、勝新さんは晩年、週に1回は取り巻きをつれてキャデラックでイチバンに乗りつけてきたという。店の前のキャデラックを見て、「あ、勝新さんがいる!」と店に入ってくる常連さんもいたそうだ。妻の中村玉緒さんや息子さん、娘さんと家族で揃って訪れることもあったというから、よほど気に入っていたのだろう。

そんな勝新さんには、イチバンに来るといつも注文するものがあった。それが、名物「エビフライ」。美味しいものを食べ慣れていただろう勝新さんが、週に1回、必ず食べていたという「エビフライ」とは、どんなお味なのか!? めちゃくちゃ気になる! ということで、勝新さんの大好物だったエビフライ(1800円)を食べてみた。

・巨大なエビフライに驚愕

第一印象は「……で、でかい!!」。お皿からエビが はみ出しかけている! さすが勝新さんの好物だけあって、エビフライも豪快なのだ。添えられた千切りキャベツとポテトサラダ、タルタルソースが、まさに正統派ストロングスタイル。今まで、エビフライを前にしてここまでワクワクしたことがあるだろうか、いやない。

早速、ナイフを入れてみると、程よい手応え。切り口を見たら、カリカリの衣をまとったプリップリのエビが こんにちは! 同時に立ち昇るエビの芳醇な香りに誘われて、思わずガブッとかぶりついてしまった。

その瞬間、口中に広がる濃厚なエビの風味。サクサクの衣と肉厚のエビの食感が、もうたまらん。タルタルソースとの相性もバッチリで、ゴハンが進む、進む。あっという間に2匹とも尻尾から頭まで完食してしまった。

・亡くなる2週間前にもイチバンへ

勝新さんは、このエビフライを毎週食べていたのか。私(筆者)は勝新さんの全盛期を知らない世代だが、それでもなんだかノスタルジックな気分になる。気取らない店で、気取らずに食べるエビフライは、勝新さんにとってどんな存在だったのだろうか。

亡くなる2週間前に、病院を抜け出してイチバンに来た勝新さん。いつも通りエビフライを注文したものの、ほとんど食べられなかったそう。そして去り際に、職人気質で勝新さんに媚びることなく普通のお客さんと同じように接し続けたイチバンの店主に自分の CD を渡して、「世話になったな」と挨拶。その一言を受けて、普段無愛想だった店主も「ありがとうございました」と丁寧に頭を下げたそうだ。

なんだか映画のワンシーンのようで、グッとくるではないか。ここまで勝新さんが愛したイチバン、今は店主の息子さんが二代目として店を継いでいたのだが、残念なことに来年2014年1月6日で閉店することに。こうして町の灯りがポツリポツリと消えていくように昭和のメモリーが失われていくのは、寂しいものだ。

さよなら、勝新が愛したイチバン! さよなら、勝新の大好物エビフライ! とにかく、めちゃくちゃ美味かったぞー!!

・今回ご紹介した飲食店の詳細データ

店名 イチバン
住所 東京都渋谷区恵比寿2-10-5
時間 11:30~13:45(ランチ) / 18:00~24:00(ディナー)
休日 無休

Report:川内イオ
Photo:RocketNews24.

▼恵比寿の地元で愛される洋食屋イチバン
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▼ナイフを入れると肉厚でプリップリのエビが現れる
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▼二代目の店主と、勝新さんとの思い出を語ってくれた女将さん
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