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最近のノートPCの多くには、ウェブカメラが内蔵されている。ビデオチャットの時には非常に便利だ。しかし、もしこのカメラを通じて、他人が自分を盗撮しているとしたら……? スパイ映画のような話だが、現実には想像以上にこうした盗撮が起きているのかもしれない。

先日、米大学の研究チームが2008年以前に発売された MacBook と iMac を対象に研究を行い「MacBookのウェブカメラで盗撮が可能である」という研究結果を発表。大きな話題を呼んでいるのである。

・注目を集めた「ミス・ティーンUSA盗撮事件」

ミス・ティーンUSAに選ばれたキャシディ・ウルフさんが、盗撮されたヌード写真をEメールで送りつけられるという事件が注目を呼んだのは最近のことだ。この事件が特に注目を集めたのは、そのヌード写真が、ウルフさん自身の所有するパソコンのウェブカメラで撮影されたものだったからである。

通常であれば、ウェブカメラは撮影時に警告灯が点灯するようになっているが、ウルフさんのケースでは点灯がなく、自分が撮影されていたことに全く気付かなかったという。

・女性のPCを遠隔操作しヌードを盗撮していた

FBI の調査により、容疑者は彼女の高校の同級生、 ジャレド・アブラハム容疑者であることが判明した。容疑者のコンピュータ内で、ウルフさんやその他複数の女性を盗撮するのに使用していたソフトウェアを見つかったという。なんと容疑者は、ウルフさんのパソコンのウェブカメラを自分のパソコンから遠隔操作し、撮影していたのだ。

・米大学研究チーム「ウェブカメラによる盗撮は実質可能」

米ジョンズ・ホプキンズ大学のコンピュータサイエンス教授のスティーブン・チェコウェイ氏は、2008年以前に発売された MacBook と iMac を対象に研究を行った結果、遠隔操作によってウェブカメラを使って盗撮をすることは可能である、と論文で発表している。

チェコウェイ氏は、同じような遠隔操作は他社のモデルのノートパソコンにも行える可能性があると指摘している。これが事実であれば、ウェブカメラが内蔵されているノートパソコンを持っている人は、誰もが盗撮の危険に晒されているということなのだろうか……!?

・カメラ内蔵チップのプログラムを書き換えることで盗撮が可能に

チェコウェイ氏によれば、Appleのコンピュータに内蔵されているウェブカメラは、こうした遠隔操作による盗撮を防ぐことを意識して設計されてきたとのこと。まず、カメラが撮影するときには必ず警告灯がつくようになっている。また、警告灯が点灯しない状況でウェブカメラが起動することが無いように、CPU上のソフトウェアが設計されているそうだ。

しかし、研究チームによると、マイクロコントローラーと呼ばれる、カメラ内部のチップのプログラムを変更することで、こうした安全機能を無効にすることができるという。具体的には、「カメラと警告灯を個別に起動することが可能である」とのことである。

・バッテリーを爆弾に! キーボードを「個人情報送信装置」に!!

なお、こうしたマイクロコントローラーへの外部からの攻撃は、日に日に増しているそうだ。 そうした攻撃によって、できうることは盗撮だけではない。

Twitter社のセキュリティ専門担当、チャーリー・ミラー氏は「Apple製品のバッテリーを制御するソフトウェアを攻撃して、急速にバッテリーを消耗させ、製品を爆発させる」といったことが実質的に可能であることをデモで示している。また、別の研究者の実験でも、同じような方法で、Apple製品キーボードを「個人情報送信装置」に変身させることが可能であることが示されている。

・ネット上で他人のコンピュータを操作できるソフト「RAT」の悪用が増加

なお、今回アブラハム容疑者が使用したソフトは「RAT」と呼ばれるもの。RATは、インターネット上で他人のコンピュータを遠隔操作することができるソフトだ。もちろん、これは合法的な方法で使用することを目的としている。たとえば、IT部署のスタッフが他の部屋のコンピュータを操作、管理するのに使われたりする。

しかし、悪用されるケースも増えている。2008年、米フィラデルフィアの高校では、IT管理者がこのソフトを使って、生徒の画像を5万6000枚も盗撮するという事件が発生。この際は、カメラの警告灯の異常な点灯に学生が気付き、事態が明るみになった。

・盗撮防止対策は「カメラの上にテープを貼り、物理的に隠す」

実際どのように、ソフトウェア上でそうした操作が行われるのかは、動画「Macbook pro iSight camera can be activated」を見てみてほしい。それにしても、こうした外部からの攻撃が増しているなか、個々のユーザーはどうのような対策を行えばよいのだろうか?

盗撮防止対策に関しては、ミラー氏いわく「安全を得るための、もっとも良い方法は、カメラにテープを貼り付けておくことですね」とのこと。ハッカーの手が及ぶ前に、個々人で対策を行っておくのも賢明かもしれない。

参照元:YouTubeThe Washington Post(英文)
執筆:佐藤 ゆき