taiwan

この物語は真実の話である。「異国の地で同じ過ちが起こらないように……」と、とある男性の記憶を辿ってもらった。いつ誰の身に降りかかってもおかしくないものであり、特に男性の方は必見の内容である。

――あれは24歳の夏であっただろうか。ギラギラと照りつける太陽の下、僕は台湾へと降り立った。ブラック企業に勤め始めて4カ月、無謀な海外営業を押し付けられ、意味不明なままでの海外出張だった。

「台湾の人はいい人が多い」「台湾の女の子はかわいい」という情報は仕入れており、期待に胸を膨らませ、無事に台湾に到着。国際空港付近は栄えておらず、こんなもんかと思ったが、台北市に降り立つと事情が変わった。

宿泊したホテル付近はギラギラとしたネオンが光っており、日本系列のコンビニも多数。街中では日本語も多く見られ、安心することができた。そして女の子は噂通りに可愛らしく、僕は確信したのだった。

あぁ、台湾はいい国だなぁ……

――それからはブラック企業の営業はそこそこに観光を楽しみ、取引先でかわいこちゃんが出てくれば「君、かわぅぃーね!」を連発。特に写真館の店員はかわいこちゃん揃いで、炎天下でも足取りは軽くなり、写真館にアポイントを多く入れた自分を褒めたくもなった。

そして台湾中を周り、日本に帰国する日が近づいたとき、事件は起きたのだった……。

街中で喫煙スポットを探していたときに一人のかわいい女性が話しかけてきた。化粧品を取り扱っていて、そのアンケートをとっていた彼女。なるほど、さすがは美容関係。どうりでカワイイ訳だ。僕はこれから搾取されることも知らず、ただニヤニヤしていた。

「日本のこと大好きなの! もっとお話したいなぁ」と彼女。僕は快く承諾し、さりげなく会う時間を夜に設定した。約束の時間までホテルに戻り、自分を磨いて準備万端。約束した場所へ向かうと彼女はいた。

食事を済ませると彼女は「せっかく台湾まできたんだから」と、なんと会計まで済ませてくれた。その優しさに感動した僕の中に、「騙される」なんて発想は一切なかった。

あぁ……台湾ってホンットにいい国だなぁ

「お酒でも飲みますか」と言おうとしたら、何やら彼女の様子がおかしい。「化粧品のアンケートの仕事を少し手伝って欲しい」と言われ、渋々ついていくとビルの中へと誘いこまれた。厳重なセキュリティチェックもあるシッカリしたビルだが、地下へと連れられ、猛烈に焦った。そこで気づいた。

だまされた……! 淡い期待はおろか、臓器までもいかれるパターンのやつや……!

そしてたどり着いた地下の先には、人、人、人……中学生くらいの若い連中もおり、何やら講義のようなものもやっていた。一心不乱に携帯で何かをしている光景も目に付く。そこで僕は確信した。

台湾版ネズミ講だ……!

しかし周りは親切すぎるし、どうなんだ? 世の中そんなに悪い人ばかりではない!?……と思っているうちに検査が始まり、化粧品のアンケートというだけに肌年齢を調べられた。

結果は当然のように40代。「だよなだよな……そうくるよな」と思っていたら案の定サプリメントのお出ましだ。「これを飲んだら若返ることができるから購入して」とせがむ集団。

幸い大金は所持しておらず、「仕事が残っているから帰らせてくれ! 上司から電話もくる!」と見え透いた嘘をぶっこき、必死に抵抗した。すると、絵に描いたように奥の部屋から数名の大男が……出てくると思いきや、幸か不幸か出てこなかった。

結局、あまりの必死さが伝わったのか、検査料(日本円で400円程度)を支払うと釈放してくれた。ホテルまでタクシーを使う距離ではなかったが、車に飛び乗りその場を後にし、悔しさを爆発させたのは言うまでもない。

それから日本に帰国し、教えていたメールアドレスに彼女から何度か広告メールが届いたが、数回で途切れた。騙されてしまったが、これだけは声を大にしていいたい。

「台湾の女の子はかわいい」「台湾……また行き台湾……!」

……という体験談だ。結果的に彼はまだ騙されているが、踏みとどまった方である。一歩踏み外すと大変なことになる可能性もあり、男性諸君は甘い誘惑に惑わされないようにしよう!

執筆:原田たかし
photo:RocketNews24.