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『ナターシャ通信』は、ウクライナに住むウクライナ人女子・ナターシャがお届けするコラムです。ユニークな日本語はナターシャの個性としてご理解いただければ幸いです。それではどうぞ。

ウクライナと言えば何? 絶対にモテる女性、素敵な風景、美味しいサーロ(豚肉のあぶら)だと思われています。後は? 他のウクライナの文化の題材はあまり知られていないらしいです。今回はウクライナに古くから根付く精霊や妖怪についてお伝えします。

・ウクライナの信仰・文化の背景

子供のころから空想的なお化けの世界の話は面白いと思います。ぞくぞくする恐いウクライナ話の主人公の呼称と特徴をご紹介しましょう。オバケの話のバックグラウンドは民間信仰の視点であり、いくつもの宗教の影響のを受け、培われました。主にギリシア正教とペイガニズム(自然崇拝や多神教の信仰)を基板としており、アニミズム(すべてのものに霊魂・精霊が宿っているという考え方)の影響も受け、ウクライナの恐い話が多数作られました。

・かわいい女性のお化け

「マヴカ」とは、超可愛い女子のふりしているオバケのことです(見た目は人魚と似ているらしい)。別の呼び方は「ニャヴカ」。マヴカたちはかっこいい男性を獲物に、ベタつき、くすぎりすぎることで殺人を起こしているらしいです。マヴカに化けているのは洗礼(キリスト教における特殊な儀式)を受けずになくなった女の子です。キリスト教の洗礼はキリスト教徒となるために執行される儀式であり、犯した罪を清める意味も含めています。キリスト教によると、死亡した洗礼を受けていないお子さんは天国の祝福も受けられないし、地獄にも落ちられなくなります。そのためオバケになってしまいます。

・一番怖いウクライナのお化けとは?

さて、一番恐いウクライナの女性オバケは何でしょうか。それは「バーバ・ヤガー」だと呼ばれるオバケなのです。バーバ・ヤガーとは魔女のお祖母さんのことです。小さい子供を食うのが好きなオバケです。普段、バーバ・ヤガーは臼を使って移動するので、見たらすぐ分かります。

・超可愛いお化け「ドモヴィーク」

可愛い「ドモヴィーク」もウクライナのお化けの一つです。これは何の怪人でしょうか。子供の頃からこんな話があります。「いたずしたらドモヴィークが来てお仕置きするよ」。ドモヴィークとはウクライナ(スラブ人)の神話によると家を守っている優しい精霊のことです。

普通、ドモヴィークは悪意の気持ちを持っていないので、お仕置きとは子どもに対する脅しですね。しかし、一般に知られている優しいドモヴィークはキリスト教によると堕天使であり、不幸をもたらしている霊とされています。

・「ドモヴィーク」はウクライナの座敷童

ドモヴィークの姿というと、身だしなみに気を使わないし、ひげも生やしているし、汚れてしまった服も着てるし。ドモヴィークは男性と女性、いずれもいます。旧ソ連のあるアニメ作品においてはドモヴィークの可愛いバージョンがあります。アニメのキャラクターは大変愛らしいです。

実はドモヴィークは、気質によって違うらしいですよ。時々実家にいいドモヴィークを招くため工夫が必要だとされています。たとえば、出来たばかりのパンを千切り、塩をつけ、暖炉の近くに置くと、ドモヴィークはそれを食べ、喜ぶそうです(どうして暖炉に近くかというとドモヴィークは温かい場所が好きだから)。またドモヴィークはいたずらとツッコミが好きです。ポケットの中で鍵が見つからなかったら、それは忘れがちなあなたのせいではなく、ドモヴィークのいたずらなのです。

・ウクライナの火の鳥「ジャル・プチツァ」

もう一つのオバケは「ジャル・プチツァ」と呼ばれている生き物です。名前はウクライナ語で「火」と「鳥」を意味する言葉です。フェニックスに似ている鳥であり、「縁(えん)」と「幸せ」、「運」をもたらしている鳥です。伝説によると食べ物にこだわりがあり、好きなのは「永遠の若さ」のりんごだそうです。

このジャル・プチツァは甘い声で歌い始めたら、くちばしから真珠を出します。ジャル・プチツァは人気なキャラであり、火の鳥に捧げられている作品は山ほどある。子供の頃には、ジャル・プチツァというチョコレートもありました。

日本と比べたら、ウクライナの民話に登場しているオバケはそんなに怖くはないでしょう。しかし覚悟しないといけないかもしれません。怨霊や浮遊霊などはなくても森に遊びに行ったらバーバ・ヤガーに遭遇したら怖くなるではないでしょうか。

執筆:ナターシャ
参照元:YouTube