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「パイナップルケーキ」は台湾土産のなかで不動の人気を誇る。しっとりホロホロとしたケーキ生地に、甘いパイナップル餡(あん)がたまらない一品だ。

夜市で、お土産屋さんで、コンビニで。パイナップルケーキは、どこでも買えるが台湾人によると「パイナップルケーキには “偽物” があるから、よく見て買ってください」とのことだった。パイナップルケーキは中国語で「鳳梨酥」というが、彼らの言う “本物” のパイナップルケーキは特に『土鳳梨酥』と呼ばれるそうだ。一体何が違うのだろうか? 実際に食べてみた。

・台湾人「 “偽物” のパイナップル餡は冬瓜でできている」

台湾人によると “偽物” のパイナップルケーキの餡は、パイナップル100%ではなく、冬瓜でできているという。冬瓜は、淡白な味のウリのこと。伝統的な製法ではなめらかさを出すために、パイナップル餡に冬瓜を混ぜるというのがスタンダードである。だが、なかには冬瓜しか入っていないのに「パイナップルケーキ」と銘打って販売されていたものもあるそうだ。

このパイナップルがまったく入っていないものを “偽物” と呼ぶようである。大きく分けて、パイナップル100%のもの、冬瓜+パイナップルのもの、冬瓜のみのものの三種類が存在するという。

・ “本物” のパイナップルケーキ『土鳳梨酥』

そのパイナップル100%でないものに対し、“本物” と言われるのが『土鳳梨酥』だ。「鳳梨酥」はパイナップルケーキ。「土」は中国語で「昔ながらの」、「その土地の」という意味がある。冬瓜入りのものとは区別してこう呼ぶそうだ。

・食べ比べてみた

冬瓜が入っていても美味しいのに、台湾人があえて“本物” と推す『土鳳梨酥』はどんな味がするのだろうか? 台中の有名店「日出」の『土鳳梨酥』と一般的な冬瓜入りのパイナップルケーキを食べ比べてみた。

・『土鳳梨酥』はまるで新鮮なパイナップルを食べているような食感

『土鳳梨酥』を割ってみると、中には肉眼で確認できるほどの繊維質! 甘酸っぱい香りが漂う。餡にはジャムっぽい粘りはなく、噛むとシャクシャクと音がする。加工品なのにまるで新鮮なパイナップルを食べているようだ。

また、餡と皮のバランスが絶妙だ。隠し味のチーズのまろやかさが、酸味の刺激を消してくれる。爽やかさだけが口の中に残るのである。全く新しいパイナップルケーキだ。

・冬瓜入りのパイナップルケーキは甘くて万人受け

一方、冬瓜入りのものは餡がとてもなめらか。甘く優しい味だ。『土鳳梨酥』と比較するとパイナップルの味が薄いことは否めないが、酸味が苦手な人でも美味しく食べられるよう配慮がされている。

・現地では “偽物” が懐かしいという声も

結果から言うと、どちらも美味しかった。ただ味のベクトルが違うので、好みによって選ぶと良いだろう。甘酸っぱくよりフルーツ感を楽しみたいなら『土鳳梨酥』、洋菓子のようなスイーツ感覚が好きなら冬瓜入りのパイナップルケーキだ。

ただ、近年、台湾では本物志向から冬瓜のみの “偽物” は激減している。そして、空港などのお土産屋さんでは冬瓜入りのものの扱いも減り、『土鳳梨酥』の比率が高まっている。やはり『土鳳梨酥』は味も食感も異なるので、昔食べた 冬瓜たっぷりのものが懐かしいという声も出ているようだ。子どもの頃の駄菓子を懐かしむのと同じような気持ちなのかもしれない。

Report:沢井メグ

▼台中の有名店「日出」の『土鳳梨酥』
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▼パイナップルケーキでは珍しい丸い形だ
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▼成分表、確かに「冬瓜」の文字はない
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▼こちらが一般的なパイナップルケーキ「冬瓜」の文字が確認できる
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▼割ってみた
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▼繊維質たっぷりだ
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▼一般的なパイナップルケーキ
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▼なめらかな餡だ
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▼台中にある日出の店
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