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人は誰でも、「穴場」という言葉に心くすぐられるものである。この言葉に、何か特別な期待を抱かずにはいられないはず。今回はそんな穴場と呼ぶにふさわしいお店をご紹介したいと思う。

・危うく素通りしてしまうお店
そのお店は、東京・上野のアメ横の路地裏にある。お店の看板は通りを入ったすぐのところで見つけられるのだが、お店そのものはウッカリしていると危うく素通りしてしまうほど、存在感が薄い。しかし看板メニューのとんかつは、穴場という言葉に抱いた期待を裏切らないものだ。

・ここがお店?
「とんかつ まんぷく」の看板は、JR御徒町駅から広小路方向へ一つめの通りを入ったところにある。白地に黒の文字で「とんかつ」、赤い文字で「まんぷく」と書かれている看板。その矢印の指す方向を見ると、行き止まりに見えるのだが……。

よくよく見ると、トタン張りのような建物に、今度は赤と青の文字で「とんかつ まんぷく」と看板があるではないか。ここがお店? と思わずにはいられない。ガラス張りのドアから中を覗いてみると、カウンターだけのかなり小さな店だ。しかも結構狭い。入っても大丈夫なのか、一瞬不安になる。しかし……。

・店幅3メートルの激狭な店内
中に入ると、外から覗いた通りの狭いお店だった。カウンターは8席しかなく、店幅は多く見積もっても3メートルもない。カウンター席の真後ろにはすぐに壁が迫っている。そして目の前の厨房スペースもせいぜい1メートルくらいしか幅がないように見える。

・静寂が支配する無音状態
もうひとつ気になったのは、店内無音。冷蔵庫の低いノイズと、とんかつを揚げるチリチリとした音しかしないのである。客はまるで息を殺すようにして、黙々と料理に食らいついている。ただならぬ緊迫感が漂う店内。アメ横の喧騒とは打って変わって静寂に支配されたこの店で、記者(私)はとんかつ定食をオーダーした。

カウンター内の厨房には店主と思われる年配の男性と若い男性が二人。この二人が静かに、しかし確実に料理を仕上げている様子がうかがえる。二人の間には会話がない。長年培ったであろう、阿吽(あうん)の呼吸でオーダーをこなしていく。

・油切れがしっかりとしたとんかつ
しばらく待っていると、カウンター越しにみそ汁と漬物、ご飯ととんかつが出てきた。やや深めのキツネ色に揚ったとんかつは、見た目からしておいしそうだ。油切れがしっかりしており、器にはまったく油が垂れていない。箸で衣をつついてみると、サクサクの衣の感触が伝わってくる。

・ザックリとジュワッのコントラスト
ソースをたっぷりとかけて、いざ実食。カラリと揚った衣は、ザックリとした歯ごたえをしており、そしてその向こう側に旨みを閉じ込めた豚肉が待っていた。肉を噛むと、ジュワッと肉汁があふれる。衣と肉汁のコントラストが絶妙だ。食べていて、ザックリとジュワッが繰り返される感触が楽しい。そこに濃厚なとんかつソースの酸味が加わって、グイグイと引き込まれるように箸が進んでいくのである。

・シーズンはカキフライ
ちなみにここはシーズン中はカキフライも絶品なのだとか。ちょっと入るのに緊張する雰囲気があるのだが、一度入ってしまえば、何度も通いたくなるお店である。やや場所が分かりにくいのだが、素通りしないように注意して、お店にたどり着いて頂きたい。

・今回訪問した店舗情報
店名: とんかつ まんぷく
住所: 東京都台東区上野4丁目1-5
営業時間: 11:00~18:00
定休日: 水曜日

Report:ほぼ津田さん(佐藤)

▼一つ通りを入ったところにある看板。この先にお店?
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▼もしかしてアレか?
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▼ここだ! なんか入るの緊張する
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▼結構狭い。客席側はせいぜい2メートル、厨房は1メートルくらいしか幅がない
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▼これがとんかつ定食。とてもシンプルだ
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▼しっかりと揚っている。油切れは素晴らしい
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▼たっぷりとソースをかけて頂きます!
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