500en
突然だが、もしも見知らぬオジサンから「すみません。実は財布を落としてしまいまして……。絶対にあとから自宅にお送りしますので、どうか500円だけ貸してもらえませんでしょうか?」と言われたら、あなたならどうするだろうか?

――今から15年以上も前のこと。時は真夏、歩くだけで汗ばむ酷暑のとき。東京の某駅の裏路地で、汗ダラダラのオジサンから500円融資を頼まれた私(筆者)は、「それは大変だ」とばかりに、快く500円を貸したのだった。

・涙を流して喜ぶオジサン
使い込んだ黒い手帳を手に、「ありがとうございます! ありがとうございます! ここに、住所を書いてください。絶対に、絶対に、帰宅してからすぐに郵送します!」と涙を流して喜ぶオジサン。聞けば地方から上京したとのこと。

・よくよく考えるとおかしい
今にして思えば、「500円程度で遠方まで帰れるのか?」と思ったりもするが、その時は人を疑うことを知らなかったのだ。ペコペコと何度もおじぎをして、感謝しながら歩きはじめたオジサン。

しかし、一週間経っても1年経っても10年経っても、お金は返ってこなかったのだ。

・数年後、再び遭遇
それから3〜4年したときのこと。まったく同じ場所で、また「すみません」と声をかけられた。顔を見ると、あの時のオジサンのような気がした。そして、「実は財布を落としてしまいまして、500円だけ……」ときたのである。

・いつかお会いしませんでしたか?
私はとっさに、「いつかお会いしませんでしたか?」と聞いてみた。しかし、500円オジサンは「いや、会っていませんケド?」と返事した。あの時と同じく、黒いボロボロの手帳に住所を書いた。そして500円を手渡した。

500円オジサンは「ありがとうございます! ありがとうございます! これで帰れます!」と何度もペコペコおじぎをして、感謝感激な表情で遠ざかっていった。その時の500円も、いまだに返ってきてはいない。これは一体なんなのか。謎である。

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