日本はもちろん、様々な国で問題になっているのが「ドラッグ」の存在だ。その国で作られていることもあるし、闇のルートで海外から輸入されることもある。花粉を運ぶミツバチのごとく、「運び屋」が運んでくるのだ。
だが、軽い気持ちで運ぼうとは思ってはいけない。「運び」のヤバさは経験者にしか分からない。ということで今回は、自身も “運んだことがある” と豪語するドラッグ事情通の「ボブ麻亜礼(仮名)」氏に話を聞いてみた。
――マレーシアに4.7キロの覚せい剤を持ち込んだ日本人女性に死刑が言い渡されましたが……
ボブ「ま、当然だよな。量とモノがヤバすぎるわな。本人は『頼まれて荷物を運んだだけで、中身を知らなかった』と言ってるらしいけど、その言い訳は通じないわな。本当に頼まれていたとしたら、アンラッキーだけども……なわけねーだろって」
――ボブさんは “運んだ” ことはありますか?
ボブ「あるね。あるけど商売じゃなくて自分のために運んだだけだよ。2回ほどある。もう時効だから言っちゃうけど、1回目はカンボジアからタイだね。モノは大麻。小さいポテチの袋くらいの大きさで」
――けっこうありますね。
ボブ「タイの大麻はモノはいいけど高いんだよね。それはさておき、ルートもいろいろ考えて、イミグレがショボい国境にした。ボート乗るルートな。運良く荷物検査はザルで、ポテチ袋は越境できた。ところが!」
――ところが!?
ボブ「イミグレ抜けてバスでバンコクに向かってる最中に検問みたいなところがあって、なんとぬきうちの荷物検査があった。それも運良くパスできたけど、あれは本当にあぶなかった……」
――逮捕される寸前じゃないですか!
ボブ「あのとき、もう二度とヤクの越境はやめようと思ったよ。ヒッピー時代に旅してた尊敬すべき旅人が、よく『国境越えだけはするな。現地で仕入れろ』って言ってたことを思い出したよ」
――2回目はどんな感じでしたか?
ボブ「2回目はタイから日本へ持ってきた。モノは大麻。俺もビビリだから、ボールペンに入るくらいの極少量だよ。一応、ニオイが漏れないように工作した。そして荷物に忍ばせた」
――に、日本ですか! 大胆過ぎますよ!
ボブ「でもね、俺は日本をナメてたよ。完全にナメてた。成田空港だったんだけど、バゲッジクレームのターンテーブルあたりで、遠くの方に柴犬みたいな麻薬犬がいたんだ。やべえ! これはマジでヤベエことになった! ……ってなった」
――麻薬犬登場ですか!
ボブ「来るな、来るな……と心で念じてたけど、アイツは来た。鼻をヒクヒクさせながらズンズンとこっちに来るわけだよ! ヒクヒクヒク、ズンズンズン! って! ブツは手荷物に忍ばせていた。そのかすかな香りを……あいつは感じ取ったんだ」
――麻薬犬すごい! がんばれ麻薬犬!
ボブ「麻薬犬を従えてる職員も、なんか俺のことを怪しんでる。麻薬犬の鼻ヒクが俺に向けられていることを職員もチェックしてた。おそらくここで『ワン』って吠えてたら職員も俺に声をかけただろうな。万事休す……と思った。ところが!」
――ところがッ!?
ボブ「麻薬犬が俺の背後に回った時、人生ベスト3に入るくらいのクッサいオナラが『ぱすーっ……』って出たんだ。緊張してたからなのかよくわからないけど、ワンコの鼻の真ん前で出たんだよ。ワンコの鼻先でウンコ臭だよ。直撃もいいとこだよ」
――麻薬犬も災難ですね。
ボブ「すると、どうなったと思う? 麻薬犬は『フシュゥゥーッ!』てな感じでメチャクチャ嫌な顔をして、顔を背けて、そのままどっかに行っちゃったんだ! マジだよ? ネタじゃないから。本当だから」
――嗅覚最強の麻薬犬ですからね。直撃はキツかったのでしょう。
ボブ「そんで、『助かった!』と思いながら出口に急いだ。いち早くこの場から脱出したかった。麻薬犬のアイツも遠くにいっちゃってる。今がチャンスだ。早く出口に、早く……と思ってたその時!」
――その時!?
ボブ「遠くのほうにいた麻薬犬が、再びこっちにズンズンと向かってきたんだよ! 『イカンイカン……ハッ! さっきのアイツ!』とばかりに気をとりなおしたのか、俺めがけて早足で近づいてきたんだ! スタスタスタスタって!」
――リベンジだ!
ボブ「ヤバイ、ヤバイ、ここで『ワン』なんて吠えられたらマジやばい! すぐ向こうには最後の関門である荷物検査の場所がある! 怖い目つきした職員もこっち見てる! ヤバイヤバイ! ……となったその瞬間!」
――何が起きたんですかっ!?
ボブ「もう一発、オナラが出たんだ。濃厚な、水っぽい、湿り気のある、あったかい……史上最強にクッサいオナラが再び出たんだ。出そうと思ってた訳じゃなくて、自然に出た。漏らしたといっても過言ではない。神風みたいだった」
――それで麻薬犬の反応は?
ボブ「カウンター気味にオナラを顔面で浴びて、やっぱり臭かったんだろうね、首を横に振ってから『くぅ〜っ』って顔をして、そのまま曲がっていった。心なしか、足がガクついてるようにも見えた。俺はそのまま荷物検査エリアを通り、出口へ出た」
――神風2連発!
ボブ「ネタじゃないからね。本当に。まあ、極少量だけど、運良く日本にもってこれたわけだけどさ、こんなハラハラしてドキドキしてリスキーすぎることは絶対にもうやらないと誓ったよ。1ヒットであのリスクだろ。これは正直吊り合わない」
――たしかにリスキーすぎますね。
ボブ「海外に行ったとき、自己責任で麻薬をやるのはかまわない。推奨するのはヘルシーな大麻だけどな。でも、ブツの国境越えなんて絶対にするな。損をしてでも、ブツは現地で手に入れろ。ヤバいと思ったらオナラしろ。俺から言えるのはそれだけだ」。