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電車の中は社会の縮図である。秩序もあれば無秩序もあり、人それぞれ、様々な “想い” がそこにはある。たとえば男の私(筆者)が電車に乗る。空いているので端っこの席に座るが、徐々に席は埋まってきた。見渡すところ、空いている席はのこり3人分。

ひとつは7列シートに座る私の隣であり、もう一つは対面7列シートに空いている2席だ。

――と、そこに新たな乗客が乗り込んだ。OL風の女性である。さぁて、どこに座るんだ……と思いきや、選んだのは私の隣。そして私はこう思う。「もしかして、この女性(ひと)、俺のこと好きなのかな……」と。あれは一体なんなのか。

■男女女男男◯私(◯が空席)
なぜ私が「俺のこと好きなのかな」と思ってしまったのかというと、それにはちゃんとした理由がある。対面7列シートに空いていた2席は、

男◯女◯女男男

であるからだ(◯が空席)。対する私側の7列シートは

男女女男男◯

である。普通に考えれば、女性であるのだから「女◯女」に座ると思う。はたまた、片方に女性のいる「男◯女」を選ぶであろう。しかし、彼女は「男◯私」を、あえて選んだのである!

■彼女が寝たふりをして「コクリ」と肩に頭をもたれて……
わりと美人だ。歳も私と同じくらいだ。もしかして同級生? それとも、どこかで会ったことある女性(ひと)だったりして。いやいや、そんなはずはない。もしや……俺のこと好きなのかな? ていうか、それしか “あえて” 私の隣に座る理由はない。

彼女が寝たふりをして「コクリ」と肩に頭をもたれてきたらどうしよう。電車の揺れに合わせて、不自然に身体を接近させてきたらどうしよう。どうしよう、どうしよう、ドキドキドキ……と妄想は膨らみに膨らみビッグバン5秒前! といった頃合いに、彼女は何事もなかったように下車していくのである。

■なぜ「俺のこと好きなのかな」と思ってしまうのか
結局のところ、何もない。なぜ彼女が私の隣を選んだのかは謎であるが、単に女性が自分の隣の席に座ってきた “だけ” なのである。それなのに、一体なぜ私は「もしかして、この女性(ひと)、俺のこと好きなのかも……」と思ってしまったのか。

私なりに考えてみたが、これは単に「考え過ぎ」という結論に落ち着いた。妄想しすぎ、と言い換えてもよいだろう。しかし、世の男性には私と同じように「俺のこと好きなのかな」と思ってしまう人も数多い。電車に乗る男の脳みそは、終始いそがしく様々なことを考えているのである。

(写真、文=GO
GOさんのシリーズコラム『あれは一体なんなのか。