大きな怪我や病気を患って手術や入院を経験したことがある人もいることだろう。そんなときに実感するのが医者の凄さではないだろうか。患者にとって彼らは、人生における数少ない、文字通りの「命の恩人」である。だが医者にとっては、患者というのは大勢いるものだ。

そんななか、いま海外では、ある医師がすでに亡くなってしまった患者の遺族へ宛てて書いた手紙が大きな反響を呼んでいる。おそらく彼は、一日に何人もの患者の対応をし、これまでに何度も人間の死を目の当たりにしてきたであろう。それにもかかわらず、この医師がいまは亡きたった一人の患者とその遺族を想って書いた手紙に、多くの人が心打たれているのだ。

手紙は、乳がんで亡くなったある女性の夫宛てに書かれたもの。夫婦の息子が、この出来事をソーシャルニュースサイトRedditに投稿したことからネット上で広まった。女性は亡くなる直前に、呼吸困難のため緊急で病院へ運ばれたそうだ。そのとき彼女を担当した救急救命室の医師が、この手紙の送り主である。

『○○様 私は、先日奥様を担当した救急医です。奥様が亡くなられたと聞き、お悔やみを申し上げたく筆をとりました。20年間救急救命室の医師として務めてきて、この仕事の緊急性やすべての方に平等に接すべき医師という立場から、これまで一度も患者の方やそのご家族に手紙を書いたことはありません。

しかし今回ばかりは、特別な想いを感じています。病気を患い、呼吸をするのも困難な状況であるにもかかわらず明るく振る舞う奥様と、献身的に支える旦那様の姿に深く感銘を受けました。旦那様は非常に協力的で、奥様に穏やかに話しかけ気遣っていらっしゃいました。医師としての経験から、家族の愛や支えが患者にとってなによりの癒しであることは実感しています。

奥様が亡くなられたことは非常に残念でなりません。お二人の強い絆や素敵な思い出が、旦那様の深い悲しみを癒してくれることを願っています。心よりお悔やみ申し上げます』

この手紙を書いた医師は緊急で対応に当たったため、そのとき以外、亡くなった女性やその家族に会ったことは一度もなかったという。急な患者が多く、いつも忙しい状況の中で働いているにもかかわらず書かれた手紙に、多くの人が感動しているようだ。

「素晴らしい医者だね。泣けたよ」
「自分はまだ研修医だけど、いつかこんな医者になりたいと思う」
「確かに、一部の患者だけに特別な対応をするのは良いことではないけど、この手紙は素晴らしい」
「これを受け取ったのが自分だったら、悲しい気持ちも少しは楽になると思う」
「この医者はプロであり、人としての優しさも持ち合わせている素晴らしい人物だね」

……などなど、多くのコメントが寄せられている。医師から届いたこの手紙、みなさんはどのように感じただろうか。

参照元:imgurHuffington Post(英文)