皆さんは、イランでもっとも有名な日本人をご存知でしょうか? イランの街角を歩いていると「ナカムーラー」(中村俊介)や「カガーワー」(香川真司)など、サッカー選手の名を口にする人が多かったのですが、有名サッカー選手をしのぐほど、絶大な知名度を誇る日本人がいるのです。

それはなんと、NHKの連続ドラマ『おしん』なのです。イランの人は『おしん』が大好き。過去二回(1980年・1990年代)ほど放送されたのですが、最高視聴率は90パーセント! もしかしたら日本人よりも『おしん』好きかもしれませんね。

この作品は、NHKの連続テレビ小説第31作目として、1983年4月から84年3月まで放送されました。田倉しんという主人公の女性の生涯を描いた物語で、彼女の健気な生き様が感動を呼び、日本でも平均視聴率52パーセントを記録したのです。

海外では、イランをはじめとする66カ国で放送され、世界で最もヒットした日本のテレビドラマとして今もなお支持されているそうです。特にイランでは爆発的なヒットとなり、30代以上では日本をあらわす代名詞として、『おしん』という言葉を使う人さえいるのだとか。実際に現地の人に話しを聞くと、次のようなコメントを得ることができました。

「当時のイラン人女性の、理想の女性像でした」 40代女性
「最近は韓国ドラマが流行ってるけど、安いストーリーでいやだねえ。頑張り者のおしんちゃんが皆大好きだった」 50代男性
「最近の若い人は名前は知ってるけど見た事ない人もいると思う。30~60歳ぐらいの人だったら皆知ってるよ」 20代女性
「おしんさん元気か?」 60代男性

……など。ドラマを見て育った年代の人には、深く浸透しているようです。もしもイランを旅する予定のある方は、街で「どこから来たの?」と声をかけられたときに、「JAPAN OSHIN」と答えてみてください。きっとみんなニッコリと笑顔を見せてくれるはずですよ。

取材、写真:Photographer Koach
執筆:フードクイーン・佐藤