皆さんはケニア(ケニア共和国)という国についてご存知でしょうか? 東アフリカに位置する人口約4000万の共和制国家です。北はエチオピア、南はタンザニアと国境を接しており、野生動物を見ることのできる国立公園や国立保護区を数多く有しています。記者(私)がここを旅していたときのこと、思わぬ事態に遭遇しました。マサイマラ国立保護区に行く途中で車が泥濘(ぬかるみ)にはまってしまったのです。

どうにも抜け出すことができなくなったとき、突然思わぬ助っ人が登場! マサイ族の皆さんが助けてくれたのでした。

マサイマラ国立保護区は、首都ナイロビから車で6時間ところにあります。当然車なくしては行くことのできない場所。すなわち車のトラブルは、命取りになるといっても過言ではないでしょう。訪問した時期は雨季であったため、路面状況は決してよいとはいえません。ときには川を車で渡るということもしばしばです。記者の乗った車が川を渡ろうとしたそのとき、泥濘にはまってしまいました。

ドライバーがいろいろと試行錯誤をして、抜け出そうとするのですが思うように行きません。その間も上流から水が押し寄せてきて、水位が次第に増していきます。このまま帰れなくなるのだろうか……。と不安に思っていたところ、どこからともなく赤いマントを羽織った集団があらわれました。

マサイ族の皆さんです。彼らはこちらの事情を察すると、すぐに車を取り囲み押し始めたのです。そしてドライバーの号令「せーの!(現地の言葉)」で力を合わせ、何とか泥濘を脱することができました。私たちが何度も「Thank you!」とお礼をいうと、はにかんだ様子で嬉しそうに笑い、軽やかに立ち去って行ったのでした。おかげで記者は、マサイマラ国立保護区で思う存分、野生動物の姿を撮影することができたのです。

余談ですが、マサイ族の間では急激なライフスタイルの近代化が進んでいるそうです。腰に剣を携えた彼らは、腕にGショックと携帯電話を持ち合わせています。ほんの少しだけ、複雑な気持ちになりました。

とはいえ、「草原の貴族」と称される彼らの誇り高い姿勢は変わらないようです。つかの間ではありましたが、マサイ族との素敵な出会いの瞬間でした。

取材、写真・動画:Photographer Koach
執筆:フードクイーン・佐藤

▼ マサイ族の皆さんが助けにきてくれた

▼ バイクが勢いをつけて渡ろうとしたが撃沈

▼ マサイマラ国立保護区の野生動物たち

▼ 動物を見る際は、車の天井が上がり顔出して見る

▼ マサイマラの夕日