現代は飽食の時代といわれていますが、大昔は食料の確保にも大変な苦労を伴っていました。当時は、ふくよかな肉体は「富の象徴」とされ、痩せ型の女性よりも、ムチムチ体型の女性のほうが美人とされていたそうです。そういえば、名画・名作と言われる絵画や彫刻の裸婦たちは皆、ふくよかな体型をしていますよね。

痩せている女性のほうが美しい、という価値観が浸透したのは、1950年代に活躍した往年の大女優オードリー・ヘプバーンの影響が大きいでしょう。それまでに活躍してきたグラマーな女優とは相反する、美乳・薄い体・長い首・細い腕・小尻などが、スクリーンの中の彼女に憧れる一般女性に与えた影響は絶大でした。

時は流れて21世紀。数年前に「樽ドル」と呼ばれるアイドルたちがブレイクしたのを覚えていますか? 樽ドルとは、「樽のような肉感的な胴回りのアイドル」の略です。そのままですね。樽ドルもまた、当時の社会にそれなりの影響力を持っていました。ぽっちゃり女性専門のキャバクラや風俗店が続々とオープンし、オードリー・ヘプバーン登場以前の豊満なオッパイや大きなヒップが良しとされる時代が、再訪したのかと思わされたくらいです。

とはいえ、樽ドルとオードリー・ヘプバーンでは、やはりオードリーの影響力のほうが息が長いようで、樽ドルブームの終焉と共に、ぽっちゃり専門キャバクラや風俗店も徐々に数が減り、メディアでは相変わらずスレンダーな女性タレントが活躍しています。

ところが最近、またムチムチブームが巻き起ころうとしています。発端となったのは、ずばり「エロゲー」です。「ボテ腹」という言葉をご存知でしょうか? エロゲーに登場する、ボテッとした腹部の女性キャラクターのことです。

ボテ腹キャラクターが登場するのは、主に「孕(はら)ませ」と呼ばれるエロゲーです。これは子作りをメインにしたゲーム内容で、女性キャラクター合意の元で生殖行為を行なうパターンもあれば、ほぼ凌辱に近い形で行なわれることもあります。

「孕ませ」や「ボテ腹」が流行する背景には、長引く不況の影響で、結婚して子どもを持つという人生設計は当分考えられないという、現代人特有の事情が関係しているのではないでしょうか? うかつに「もしものことがあっても責任とるよ」とは言えない時代です。授かり婚に慎重になった今だからこそ、せめてゲームの中くらいでは、純粋な生殖行為をしたいという願望が表れているのかもしれませんね。

以上を踏まえると、男性たちがエロゲーのボテ腹キャラクターを見慣れたという影響で、現実の女性でも胴回りがボテッとした、ムチムチ体型に目が行くようになってきていると考えられます。アイドル業界も、樽ドルほどではありませんが、「痩せすぎは良くない」という風潮にシフトチェンジし始めているように見受けられます。少し前では、国民的人気アイドルグループの研究生が、10キロほど増量したのではないかということで「魅力的になった」と高評価を得ていますよね。

このままの勢いでいくと、ムチムチ女性ブーム再燃の可能性も充分考えられます。時代を先取りして、ムチムチ女性にアプローチしてみるのも一興ですよ。

恋愛コラムニスト: 菊池美佳子