中国を旅行されたことがある方はよくご存知だろう。あの国では生水を飲んではいけない。衛生面の問題もさることながら日本の水と硬度が異なるためお腹を壊すこともあり、ガイドブックにも「中国の水は臭い」「沸かしても飲まない方がいい」などと書かれている。

記者も中国の水道水は絶対に口にしてはいけないものだと固く信じていた。そんな折上海でとてもおいしいコーヒーが飲めるお店を発見。聞けば現地の水道水で入れられたコーヒーだという。

ええっ!! 中国では普通わざわざ飲用水を買って飲むのに、水道水を使うとはどういうこと!? お店の方に早速お話を聞いてみた。
 
上海で一番おいしいコーヒーが飲めるのは、テレビ塔などが見渡せる上海の観光スポット「外灘(バンド / ワイタン)」に程近い「アルトコーヒー」だ。

オーナーの野村浩哉さんは大阪の老舗コーヒー専門店で修行後、上海に移住。2006年にお店をオープンさせた。

野村さんは日本では経験豊富だが、当時は上海では手に入る豆や器具さえも疑わなければならないという情況。まさに0から実験と研究である。もちろん水も手に入るミネラルウォーターを片っ端から試してきたそうだ。

こだわった結果あえて水道水にたどりついたのには理由がある。まず一つ目は2010年の上海万博を境に水道水が随分キレイになったということ。そして中国で購入できる飲用水はそのときによって水の味が異なるため、安定した質のコーヒーの提供に適さないという理由もあった。

上海の水道水で作られたコーヒーと聞いて驚いたが、これは野村さんの研究とこだわりの結晶なのだ。

お店では浄水器でろ過された水道水を沸かしてコーヒーを出されているが、そのままの水道水でもいれていただき飲み比べをしてみた。浄水器のものは味に丸みがある。水道水のものはとんがった味だ。

この違いは水の臭みなどではなく単純に水の硬度がそのまま反映された味だ。ろ過済みの水はやわらかく、ろ過されていないものは硬い味。だがどちらも美味しい。どちらがいいかは単純に好みの問題であろう。

リスクを避けることはもちろん大切だ。だが、古い情報や思い込みだけではいいものに出会えるチャンスを逃しかねない。水道水コーヒーは常に情報収集をしチャレンジしてみるということを教えてくれている気がする。

ちなみにアルトコーヒーでは注文は豆から選ぶことができる。だが、コーヒーに詳しくない人でも大丈夫。好みの苦味、酸味、濃さを伝えればお勧めの豆をセレクトしてくれるぞ。スタッフは日本語ができる方ばかりなので安心だ。

旅で疲れた際はこちらでゆったりとした時間を過ごされてはどうだろうか。
 
・お店のデータ
ALT COFFEE(アルトコーヒー)
住所:中国上海市虹口区北外灘呉淞路30号
(上海大厦 裏)

参考リンク: ALT COFFEE

photo:Rocketnews24.

▼コーヒーは1杯40元(約480円)

▼ろ過していない水道水で作られたもの、水は意外と臭くなくコーヒーのいい香りが漂う

▼シンプルでとても落ち着く店内

▼オーナーの野村さん、現地ではコーヒー教室なども開いているそうだ

▼お店はこの上海大厦(上海ブロードウェイマンション)の裏、趣きのある街である