大阪府教委(おおさかふきょうい)こと大阪府教育委員会は17日、「府立学校の卒業式や入学式において起立斉唱を求める職務命令」を大阪府立学校の全教職員約1万3000人に対して出した。大阪府には起立斉唱を義務とする「君が代条例」があり、それを踏まえた措置となる。

つい先日の16日に、東京では「不起立」に関する最高裁の判決も出たばかり。果たして大阪の不起立教師たちは、この職務命令をどう考え、どう感じているのだろうか。

ここからは、過去に東京の不起立教師事情を徹底取材、『潜入!!プロ市民集会レポート』というタイトルで6回にわたりルポ漫画を描いたことのある、不起立業界評論家でもある漫画家マミヤ狂四郎氏に分かりやすく解説してもらおう。
 
マミヤ「まずですね、この職務命令のポイントは、大阪府庁で開かれた府立学校の校長会で、大阪府教委から各学校の校長に対して出されたという点。つまりですね、イメージすると、大阪府庁に大阪府立学校の校長が一堂に集められ、その上の立場である府教委から命令が出された、と。私はその場にいませんが、そういうシーンでありましょう」
 
――そんな感じでしょうね。でも、これがどう重要なのですか?
 
マミヤ「不起立の世界を仮面ライダーの世界に例えるならば、大阪府の不起立教師にとっての校長は、命令に順従な『ショッカー戦闘員』です。大阪府教委は、その上の立場にあたる『怪人』にあたります。では、組織としてのショッカーは何か。そしてラスボスは誰なのか? 答えは「君が代条例」を作った『大阪維新の会』と、その代表をつとめる橋下徹大阪市長にあたります。つまり、ショッカーが作った条例を踏まえて、怪人のもとにショッカー戦闘員が集められ、不起立ライダーたちが卒業式のときに監視されるといったイメージです」
 
――監視というのは?
 
マミヤ「卒業式のときに、起立をしているかどうかをチェックするのは、東京では基本的に校長先生や教頭先生の役割です。例えば起立の号令が出ているのに、座ったままの人がいる。すると、監視役の校長先生などが『●●先生、お起立下さい』と注意するわけです。はっきりと。小声ですが、はっきりと。それでもガン無視して不起立してたら、もう一度、あらためて『●●先生、お起立下さい』と注意するわけです。つまり、校長先生は、教育委員会に言われたことをちゃんと違反者に伝えましたよ、ということです。こうした動きを、不起立教師は『監視』と感じることもあるようです」
 
――なるほど……それにしても、ラスボスは橋下徹大阪市長! 東京ですと、石原都知事ですよね。
 
マミヤ「その通りです。不起立界では、橋下さんと石原さんがタッグを組むことを心から嫌がっています。あまりにも天敵すぎる。そしてあまりにも強い。ブルーザー・ブロディとスタン・ハンセンの超獣コンビよりも強い、まさに圧倒的なタッグなのです。数年前まで、まさか橋下さんがここまで不起立キラーだとは誰も予想していませんでした。まさかの天敵が、まさかの大阪から、なのです」
 
――それはさておき、大阪の不起立教師の心境というのはどう予想されますか?
 
マミヤ「やばいことになったな、最初に『釘刺されたな』というのが本音だと思います。不起立教師にもレベルがあり、不起立界のジャンヌ・ダルクと呼ばれるカリスマ教師ならばスカウターがぶっ壊れるほどの戦闘力であり、そんな命令はハナっから眼中にもないのですが、不起立教師のなかには『不起立しようかどうか迷っている』といったレベルの、ドラゴンボールのヤムチャのような、極めて不起立パワーの弱い人もいます。そういったヤムチャ先生たちは、今回の命令で『やっぱ、やばいかなぁ……』と思ったでしょうね」
 
――迷ってるくらいなら、立てばいいのでは?
 
マミヤ「そういう人もいます。シクシクと泣きながら立つ人もいるのではないでしょうか。卒業式で感動して泣いているようにも見えるので、それならそれでいいとは思いますが……。あとは、不起立を貫きたいけど、処分が怖いという人もいます。完全にヤムチャです。そういった人は過去に、卒業式の時、正門や校門の見張りをしたりする役割を勝ち取り、『起立する場面から逃げる』といったウルトラCの裏技で信念を貫いたひともいます。単に逃げただけですが、不起立の心は捨てなかった、と」
 
――ということは、東京よりも厳しいとされる大阪府の「君が代条例」で、不起立教師が激減することもあると予想しますか?
 
マミヤ「ヤムチャには効いた。だけど悟空クラスには通用しない。いや、むしろ、新たな不起立ワザが誕生する可能性があると私は思っています。つまり、脱法ドラッグのような、ルールをうまいことすり抜ける方法が……」
 
――果たして「新たな不起立ワザ」とは何なのか。いずれにしても、厳粛かつ平穏な卒業式・入学式が大阪府でとり行われることを切に願う。卒業式の主役は先生ではない。児童と生徒なのだから。

イラスト・情報提供:マミヤ狂四郎