ドラマや映画の悲しい場面や感動的な場面を観て涙を流すのは、その登場人物に感情移入しているから。人は多かれ少なかれ、他者の気持ちになってその心情を理解できるものだ。

しかし最新の研究により、他人の感情を理解しようとする能力に関して驚くべき事実が明らかとなった。それによると、人間はホームレスや薬物中毒の人たちよりも動物や車のほうに感情移入しやすいというのだ。

これは、アメリカのデューク大学とプリンストン大学が共同研究によって明らかにしたもの。実験では、100人以上の学生に様々な人物の写真を見せて、彼らの反応とその時の脳の動きが調べられた。

被験者たちは一様に、消防隊員の写真には勇敢さを感じ、身体に障害を持つ人物には同情や哀れみなどの感情を示した。しかし、薬物中毒者やホームレスの人に対しては嫌悪感を表したという。さらに、その時の脳の反応をみると、社会的かかわり合いに作用する部位がほぼ機能していないことがわかったそうだ。

研究チームを率いたハリス教授によると、「人は、不快に感じるような他者を見たとき、社会的つながりに欠かせない脳の一部を自発的に機能させないようにしていると考えられます」とのこと。

「通常、人は他人と接すると相手の心情を推測するものです。しかし、脳内の一部が機能していないために、相手が感情を持つ人間であることを認識する能力が弱まり、他者への共感が欠落するのです。その結果、動物や車にさえ感情が入り理解を示すのに対し、路上のホームレスの人とは目も合わせないようになるのです」と説明している。

今回の結果から、どんな人にも感情があるということを認識できないために起こる「共感の欠落」が、ヒトラーやポル・ポト、スターリンなど歴史上最悪の虐殺者たちの行動をも説明できるのではないかと研究者らは考えているそうだ。

「これは人間に起こる複雑な問題であり、今後さらなる研究が必要です」と教授は語っている。

参照元:Mail Online(英文)
photo:flickr aaroncorey