世界中の空港で、テロ対策のために年々セキュリティチェックが強化されている。しかし、EUでは一部空港で導入されていたX線による全身スキャナーが「健康を脅かす」という理由から廃止されることになった。

一方、同じくX線を使った全身スキャナーが導入されているアメリカでは今のところ廃止になる予定はない。アメリカとEUで全身スキャナーに対する方針が分かれる事態となってしまった。

全身スキャナーはテロ対策のため、爆発物や危険物を衣服の下に隠していないかを入念にチェックできるよう、アメリカやEUの空港で導入されたが、導入の是非をめぐる当初の議論のポイントは「プライバシー」だった。

あまりにリアルに身体の細部が映し出されるため「実質的に全裸にされるのと同じ!」「プライバシーの侵害だ!」といった批判の声が市民から続出したのだ。しかし、今回EUがボディースキャナーを廃止にしたのは「人々の健康を脅かすことのないように」という理由からだ。

つまり、健康に悪影響を及ぼす可能性があるということだが、一体どんな影響があるのだろう。

ボディースキャナーから発せられるごく微量の放射線が人体にどれほどの影響を与えるかは専門家の間でも意見が分かれるところだが、わずかな放射線によっても発がんリスクが高まるという意見が専門家から上がっており、今回のEUの決定はそうした意見を無視できないものと判断したと思われる。

全身スキャナーはあくまで安全であり、今後も設置数を増やしていくという方針を示しているアメリカの運輸保安庁(TSA)はこの件に対して特にコメントをしていないが、今回のEUの決定はアメリカ国内でも議論を呼びそうだ。

(文=佐藤 ゆき

参照元:Scientific AmericanPro Publica (英文)

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