年末が近づくと、東京・上野のアメ横(アメヤ横丁)は多くの買い物客で賑わいを見せる。おせち料理の食材を求める人が大勢つめかけ、通りは身動きが取れなくなるほどごった返してしまう。各お店は普段よりもさらに威勢良く啖呵を切って、1年でもっとも盛況な時期を迎えるのである。

ユニークなお店は数多くあるのだが、アメ横名物で忘れてならないのが「チョコレートの叩き売り」をする志村商店だ。このお店の威勢の良さは、他の店に勝るとも劣らない。次から次へと袋にお菓子を豪快に詰め込み、気持ちよく商品を提供してくれるのである。

志村商店の啖呵売(たんかばい)は、名物になるほど有名だ。過去に何度となくテレビでも取り上げられおり、上野界隈では知らない人はほとんどいないのではないだろうか。

噂には聞いていたのだが、実際に見たことがない私(記者)は、是非見てみたいとアメ横に出向いた。この日は日曜日だったためか、通りは場所によって人の行き来ができないほどの混雑をしていた。

どうやらアメ横の通り値は、1000円のようである。啖呵を聞いているとたとえば、「マグロ1000円!」や「店じまいでこのカバン1000円!」など、買い物の入り口の金額として「1000円」を提示するお店がほとんどである。

お菓子を取り扱う志村商店も売り値は1000円。1000円札1枚で袋に大量にお菓子を詰め込んでくれるのである。以下が同店の売り啖呵の一部だ。
 
「おまけおまけ、なくなったらごめんなさい! さらにおまけだ。入れちゃえ入れちゃえ入れちゃえ!」
 
こう言いながら、5~6個お菓子がすでに袋のなかに投げ込まれている。この時点で、道行く人も思わず足を止めてしまう。そして、
 
「テレビ見た方、手を上げて!」
 
誰ともなく手を上げると前に呼び寄せて、
 
「間に合いました17時までのタイムサービス!」と言ってさらにお菓子を投入。さらに、
 
「明日は何の日?」と翌日の行事について尋ねる(この日はハロウィンの前日であった)。客がハロウィンと答えると、
 
「正解! ハロウィン」。そう言って、「入れちゃえ、入れちゃえ」とさらに3~4つのお菓子を投入してしまうのである。ここまでで用意されたビニール袋はパンパンに膨れ上がっている。これが1000円と思うと、すごくお得な気がする。お店は損をしないのか? と思わず心配になってしまうほどだ。

私も実際に購入したところ、お菓子は14品も入っていた。これはいい買い物をしたと思ったのだが、よくよく考えてみると、そう高い品物が入っているわけではない。また、すでに流通していないお菓子も入っている。おそらく限定商品の期間が切れたものを安く買い付けて商売をしているようだ。

とはいえ、あの売り口上の巧妙さは見るだけでも十分に価値がある。面白いと思ったら、買い物しても損はしないはずだ。年末にアメ横を訪ねる予定のある方は、一度足を止めて聞いてみると良いのではないだろうか。延々と同じことを言ってるだけなのだが、聞いていてとても気持ちが良くなるはずだ。

写真:Rocketnews24

▼ 志村商店のチョコレート叩き売り
▼ ビニール袋が立つほどお菓子満杯
▼ 全部で14品、これで1000円