先週先々週に引き続き、上海から300キロ離れた「世界で一番安い卸売市場・義烏(イーウー)」のリポートです。

義烏最大の福田市場。中央区の半分ほどもある敷地内に、言葉を失うほど安い4万軒の卸売店が連なる──。

と、ここまでは前回紹介した通りだが、4万件・推定8万人オーバーと言われる店員たちにもそれぞれ家庭があり、それが証拠に福田市場の至る所で幼稚園から小学生程度の子供たちがバタバタ走りまわっている。

その数、少なく見積もって推定一万人オーバー、ちょっとした市町村のレベルだ。

ここいらの子供はまだまだ素朴である。

健気に店番を手伝う親孝行の女の子に微笑み、中途半端に煤けた服装でショップ横に敷いた段ボールから、行き交う人々に悲しげな視線を送る謎の男の子に頬を濡らす私。

かと思えば、だらしなく地べたに座り、黙々とゲームに興じる十名あまりの児童グループを発見。思わず顔をしかめるも、商売熱心な親に放置プレイを喰らったと考えれば不憫でもある。十年後、ブロックごとの不良グループが血みどろの抗争を繰り広げることになるのか? 

多いのはガキだけではない。

規模の割に警備が甘いせいか、空調の効いた市場内のあらゆる物陰で「その筋」とみられるズダボロのおっさん、おばさんがふて寝を決め込んでいる。

極めつけは、通路の真ん中で目玉を泳がせながら、通行人に意味深な目配せを送る謎のお姉さん……。彼女の職業は中古ケータイ端末の売買。オファーは市価の半額程度。中古にしては安すぎる。

取材に同行した中国在住のAさんが横からぼそり「これ詐欺だぜ。友達が騙されたばかりだ」と横槍を入れた。
念入りに動作確認を行い、金を払って帰ろうとした瞬間「ちょっと待って! 私のシムカードを抜かないと」と呼び止められ、目の前でシムカードを取り外して箱詰め。帰宅して箱を開けたら、中味は展示用のモックアップだった……というオチ。お気をつけあれ!
(取材・文=クーロン黒沢

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