日々どれほどの量の食品が人間の胃に入ることのないまま、ゴミとして捨てられているかご存知だろうか? アメリカでは4350万トンの食品が1年間にゴミとなっているらしい。「その量はロサンゼルスとニューヨーク間の距離の二倍の長さの列車に積み込める量に相当する」と語るのはアメリカ人映像作家のジェレミー・サイファート氏だ。

彼は、そんな膨大な量の食品が日々廃棄されているアメリカで、自ら体を張って食品廃棄問題と向き合っている。ある日、サイファート氏がスーパーの裏手にあったゴミ箱をあさってみたところ、オーガニックの新鮮なブルーベリー、輸入物のドイツチーズといった高級品までも含む、多くは「全く問題なく食べられる」食品ばかりだったという。

それ以来、彼の日々の食事はゴミ箱からあさった食品になり、家族にも奨めるようになった。なんと妊娠中だった妻に対してもだ。 彼は廃棄された食品を自分の子どもや妊娠中の妻に与えることに全く抵抗がないと話す。なぜなら「自分の嗅覚を信じているから」であり、特に精肉については冷たい状態のもの、つまり、冷蔵庫から取り出されたばかりのものしか食べないようにしているようだ。

さらに彼は、自分の経験を基に『DIVE:アメリカの食品廃棄物で生活する』(原題:DIVE: Living Off America’s Food Waste)というドキュメンタリー映画を制作した。映画を通じて、視聴者にアメリカの膨大な量の食品廃棄の現状を訴えている。

また、食品廃棄の問題を調べるうちに、廃棄物を処理するために大量の石油や水が使われていること、食品が廃棄される一方で低所得のフードスタンプ受給者は増え続けていること等、色々な問題や矛盾が浮き彫りになったと話す。

「僕はゴミ箱を空にして、人々の胃を満たしたいんだ」と語るサイファート氏。体を張った食生活の根底には、無駄と矛盾を抱える現代のアメリカ社会を変えていきたいという強い思いが流れている。アメリカ同様、大量の食品廃棄が日本でも問題になっている今、彼の行動力と問題提起には我々も学ぶ所がありそうだ。

(文=Yuki Satou

参照元:Here and Now(英文)