どんなことを聞いても何でも知っている、そんな知識豊富な人を「生き字引」と呼ぶが、世界には登録された人を「生きた本」として貸し出す図書館「ヒューマンライブラリー」があるそうだ。利用者は彼らを借りて、直接話を聞くことができるのである。

「本」となる人は紙の本同様、分野ごとに登録されている。だが、特徴的なのは「本」のバックグラウンドが難民、元不良、拒食症の患者、女装家、HIV感染者など偏見や誤解を持たれやすい人々ということだ。

「本」の借り方はごく簡単。まずはヒューマンライブラリーの目録から、読みたい「本」を探し手続きをするだけだ。館内で40~45分、「本」と話をすることができる。彼らを尊重するというルールさえ守れば何を聞いてもよいそうだ。

自分では体験できない生の情報を得ることができる。ヒューマンライブラリーを実施しているスイスの図書館員も「彼らは『本』と同じですよ、どんどん借りてください」と積極的だ。

「本」として登録されているHIV 感染者の男性。HIVの感染ルートについて間違った知識を持っている人も多い。「もし一緒に食事をしたら、私もHIVに感染するの?」と聞いてくる利用者も いる。彼は明るく「それはないよ、HIVは血液や体液を通して感染するんだよ」と答える。

そんな質問をしたら失礼なのでは? と思ってしまうが、本人は「質問をしてくれる人には感謝している。こうやって誤解が解けていくんだ」と嬉しそうだ。

また、不動産関係の男性は「移民 / イスラム教徒 / 元不良」の本として分類されている。彼は幼い頃デンマークに移民してきたそうだが、人種・宗教・貧困からいつも差別され傷つき、ついに不良になってしまったそうだ。彼は家族のお陰で更生し、今は成功を収めている。そして今、「社会の偏見を変えたくて『本』になった」そうである。

ヒューマンライブラリー活動の発起人の一人であるロニー・アイバーグさんはデンマーク人とモロッコ人のハーフだ。彼自身も偏見を持たれやすい立場である。彼は新聞記者の経験から多くの暴力と差別は対話と理解によって初めて解決されるということに気づいたそうだ。それが活動を始めたきっかけとのことである。

「例えば多くのヨーロッパ人はイスラム教徒が嫌いですよね。会ったこともないのに彼らがどう悪いのか熱心に語っている。でも、実際に会って毎日挨拶をし、一緒にサッカーでもしてごらんなさい。きっと『あいつ結構イイ奴だな』と思うはずです」と彼は語る。真実に触れることが理解への第一歩というのが彼の信念だ。

この活動の最大の支援者はEU議会だ。ヒューマンライブラリーはヨーロッパを中心にアメリカ、そしてアジアでも広がりを見せつつある。

参照元: 聯合新聞網(中国語)