
人は日々、無意識のなかで何千もの予測をたてている。たとえば「待っているバスがいつ頃到着するのか?」や「玄関のチャイムを鳴らしたのは誰か?」、さらには「メガネを床に落とした瞬間にそれが割れるかどうか?」といった小さな予測だ。
実のところ、日常の出来事における我われのこうした予測は、そのほとんどが正しいものだそうだ。なぜ、そのような正確な予測ができるのかについて、このほどワシントン大学の研究チームが、実験・解析を行い、その脳の働きにおける謎にせまった。
最初に、研究チームは、被験者に動画を見てもらい、途中で動画をとめて、次に何が起こるかを予測してもらう実験を行った。この動画は、ある人物の日常的な活動(たとえば車の洗車、プラモデルの組み立て、洗濯)などを撮影したものだ。
実験の詳しい手順はこうだ。まず、2種類の異なる動画を用意。1回目では、動画のなかで次の出来事が起こる直前で動画を止め、そして2回目では次の出来事が始まっている最中に動画を止めた。そして、それぞれにその5秒後の予測を立ててもらったのだ。
その結果2回目の動画では90パーセントの人が、動画が止まった後に何が起こるかを正確に予測できた。一方、1回目では正しい予測ができた人は80パーセント以下だったそうだ。また、1回目ではその予測に「確信がない」と答えた人の数も2回目に比べてやはり多かった。
つまり、人は日常的な事柄に関してであれば、数秒先をある程度正確に予測できる上、その予測が間違っている可能性もある程度正確に予測できるということになる。
この研究は中脳内の黒質(神経核の1つで実際にドーパミンを分泌する場所)の働きなどを主とした、「中脳ドーパミンシステム(MDS) 」に焦点をあてたものだ。この働きが、脳の中で実際に予測をたて、それ以外の脳の部位にその信号を送る役目を果たしている。
今回、被験者の実験時の脳の働きをfMRI画像を用いて解析した結果、この中脳ドーパミンシステムが予測をたてるだけでなく、その予測の誤り関してもシグナルを発していることが分かった。そのため、人は自分の予測に関して「確信がない」と意識するのである。
同研究チームのメインリサーチャーであるジェフリー・ザック教授は、人が行動を起こす際のガイドとして、数秒先の未来を予測する能力は非常に重要なものであると語る。
たとえば、ライオンが自分に向かって突進してきたら、とっさに逃げようと判断することは重要な能力だ。しかし、ライオンが襲ってくる前に、あらかじめその場を離れようとすることはさらに価値のある能力といえる。
正確な予測は、意識のスムーズな伝達により、主観的な経験にもとづいてたてられる。一方、誤った予測をした場合もやはり、中脳ドーパミンシステムが働きかけ、この意識の伝達に問題が起こったことを知覚する。
そのため、人はライオンの襲ってきそうな気配を経験上なんとなく予測することもでき、仮にライオンが予想外に襲い掛かってきてしまったとしても、とっさに逃げようとすることができるのだ。この研究結果に関しては、学術雑誌『Journal Of Cognitive Neuroscience』に詳しく内容が記述されている。
参照元:Daily Mail (英文)

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