韓国で入国拒否をされ、日本人議員が追い返された騒動は記憶に新しい。議員らは韓国の「鬱陵島」(ウルルンド)を視察しようとしただけだが、騒動になることを不安に思った韓国側が入国を拒否したとされている。

そんな騒動のあと、普通に観光として鬱陵島に言った日本人がいた。その日本人観光客A氏から連絡をもらった当編集部は、A氏から寄稿というかたちで鬱陵島のようすを知ることができた。以下は、A氏からの寄稿文である。校正はしたものの、内容はそのままである。
 
・観光目的で鬱陵島に
【寄稿】自民党視察団が入れなかった竹島(韓国名:独島)への中継地「鬱陵島」。この島に行くためには、韓国本土からフェリーに乗る必要がある。しかし一部のフェリー会社は日本人の乗船を完全に拒否している。日本政府はこれに抗議しているが、議論は平行線をたどったままだ。

はたして、この島に日本人は観光で入ることは可能なのか? そこで私は、昔から一度は行ってみたいと思っていた鬱陵島へ行ってみることにした。もちろん観光が目的である。韓国・浦項(ポハン)港は、日本海側にある港で、この場所から鬱陵島へのフェリーが出航している。
 
・独島どろぼう4名の日本国会議員
さっそくフェリー乗り場に到着すると、大きな垂れ幕が私の目に飛び込んできた。その垂れ幕に書かれた内容は、「独島どろぼう4名の日本国会議員を緊急逮捕しましょう!」というもの。公共の施設であるターミナルにこのような垂れ幕があること自体驚きで、日本人である私は、すでに威圧感を感じざるをえなかった。

鬱陵島へのチケット価格は、日本円で片道4800円。往復だと約1万円となる。私はスタッフにチケットが欲しいということを伝えると、パスポートの提示を求められた。彼らはそれをチェックすると、印刷機でコピーして保管していた。私は、何の問題もなくスムーズに鬱陵島へのチケットを手に入れることができた。
 
・韓国警察に連行された
だが私は、出航前に韓国の警察官数名に連行されることになる。「日本人ですか?」という質問に私は「はい」としか言えず、そのまま別室に連れていかれた。韓国人観光客がたくさんいる中での出来事だったので、そのシーンは意外と目立っていたかもしれない。

別室に呼ばれると、日本語を少し話せる韓国人警察官が質問してくる。名前、年齢、会社名などの個人情報をまず聞かれ、その後、何度も「鬱陵島へ行く目的」を聞かれた。「観光です」と私が何度も答えても納得してくれず、英語で「sightseeing(観光)」と伝えた。

そして、ひとりの警察官が「鬱陵島で宿は予約しているのか」と私に聞いてくる。私は予約してなかったので、素直に「予約していません。現地で予約しようと考えています」と答えると、警察官が「それでは私たちの方で宿を取ろうと思いますが大丈夫ですか?」と質問してきた。私は、「それでお願いします」と伝えて、浦項での事情聴取がそこで終了した。およそ20、30分の時間だっただろうか。
 
・またまた韓国警察に連行された
事情聴取が終わると、急いでフェリーに乗船。3時間かけて鬱陵島へ向かった。鬱陵島へ到着すると、島の警察官がすでに私を待っていて、日本でいうところの交番に連れていかれた。今度はどんな質問がくるのだろうと不安に思っていたら、内容は浦項で聞かれた内容とほぼ同じだった。

だが、ここでも鬱陵島への目的を何度も聞かれることに……。何度も「観光です」と言っているのに納得しないようで、警察官が電話機を私に渡してきた。その電話に出ると、英語を少し話せる韓国人がいろいろと私に質問してきた。

おそらく交番には、英語も日本語も話せる人がいなかったので、このような対応をしてきたのだろう。その電話口の韓国人は片言の英語で「鬱陵島への渡航目的は?」と何度も聞いてきた。それ以外にも「いつ日本に帰国するのか」や「明日はいつのフェリーで帰るのか」などの詳細を私に尋ねてくる。私はすべて正直に返答した。
 
・無言の韓国人男性と一緒に食事
およそ1時間程度の事情聴取が終わると、40~50代の島民だと思われる韓国人男性が突然交番に入ってきて、私が泊まる宿まで案内してくれた。宿までの数分の間、会話はゼロだった。なぜなら、その男性も英語も日本語も話せなかったからだ。したがって終始無言だった。

宿の前まで来ると、男性と一緒に近くの韓国料理店に入って食事をした。食事中も隣の席にその男性はいて「半分私を監視しているのか」とさえ疑ったが、比較的優しい感じの人だったので、安心して食事をすることができた。
 
・揺れてる自国の土地にでも神経使ってろ!
食事が終わると会計を済ませて宿に向かうことに。その韓国人男性は、ジェスチャーで「この宿に入って寝なさい」と伝えてきたので、私はその宿に入ってシャワーを浴び、その後、島内を散策した。街中には、竹島(韓国名:独島)の写真やパンフレットが至るところに貼ってあり、バス停などでも見かけた。一番驚きだったのが、港にあった日本人への垂れ幕だ。

●垂れ幕に書かれていた言葉
「日本政治家!来たら謝罪と反省の意味で来い、あなた達に(バナナ)を提供する」
「来たのか? 見てごらん。何がおまえたちの物か?」
「他人の領土にかまってないで、揺れてる自国の土地にでも神経使ってろ!」

このような内容が書かれた垂れ幕が複数あった。おそらく、このような垂れ幕がある限り、日本人は安心してこの島を観光することはできないだろう。島内は、非常に急こう配の坂が多く、この暑さにくわえて歩きまわるだけで汗がドバーと垂れてきた。
 
・ファミリーマートで一息
それでも、行ったことがない土地を観光するのは非常に楽しいものだ。日本のコンビニ『ファミリーマート』も発見した。売り物はほとんどが韓国製品のモノだったが、なかには「うまい棒」や「明治のマカダミアチョコレート」など日本製品も販売されており、衝動に駆られて買ってしまった。
 
・疑問が残る対応
およそ1時間程度の島内散策だたが、竹島問題で揺れるこの島はやはり緊張感で溢れていた。実際、浦項行のフェリーを待つ間も警察官による見張りは存在し、結局、最初から最後まで、監視された観光となった。

西洋人と思われる方も同じような扱いをされていたので、このような対応は、もしかしたら日本人だけではないかもしれない。しかしながら、観光客に対してこのような対応は適切なのだろうか? 大いに疑問が残る。どちらにせよ、今後の韓国政府の冷静な対応に期待したい。
 
寄稿:日本人観光客A氏

▼上から2番目は「他人の領土にかまってないで、揺れてる自国の土地にでも神経使ってろ!」

▼独島の問題は単純な領有権ではなく歴史的な問題なのを日本政府は悟らなければならない

▼バス停の待合所で掲げられている竹島(韓国名:独島)の写真

▼鬱陵島にあるファミリーマート。日本のお菓子も売られている。

▼港付近の様子。

▼坂や階段が街の至るところに。

▼おばちゃん二人が仲良く会話している。

▼島ということもあってイカが美味いらしい。

▼温泉のマークが至るところにあったという。

▼急こう配の坂。

▼黄色の電気が印象的だ。

▼A氏はこの船に乗って鬱陵島へやってきた。

▼バス停。

▼港近くにあるお店。お土産や海産物などが販売されている。