7月23日に中国で発生した温州市鉄道衝突脱線事故。高架橋上に停車していた中国の杭州駅発―福州南駅行きの高速鉄道(新幹線)D3115に、北京南駅発―福州駅行きの高速鉄道D301が衝突・脱線し、40人の死者が出たという大事故である。

その後、事故の影響のためか、人気路線である上海―北京間の乗車率は下がったという報道があったが、事故現場に近い路線の乗車率に影響は出ているのであろうか? 気になったので中国に飛び、合計3本の新幹線に乗ってきたぞ!

・上海虹橋駅―温州南駅間の高速鉄道D3101

まず乗車したのは、上海虹橋駅―温州南駅間の高速鉄道D3101だ。温州南駅といえば、事故現場に最も近い駅である。事故の影響でガラガラなのかも……と思いきや、事故発生時から12日後となる8月4日の時点では、切符を入手するのも一苦労なほどの人気ぶり。かろうじて入手できたのが、比較的安価な席である「2等席(二等座)」であった。価格は187元(約2300円)。

・座席はほぼ満席の状態

もちろん時間帯にもよるとは思うが、事故の影響なんてなんのその、「必要だから乗る」といった様子の乗客で座席はほぼ満席の状態である。座席は寝台用のコンパートメントの下段に、合計6人が向かい合うように座る形式。乗客はそれぞれ雑誌を読んだり、携帯をいじくったり、上段のベッドで寝るなどして時間をつぶしている。

・携帯電話の活躍っぷり

とりわけ印象的だったのが、中国における携帯電話の活躍っぷりである。ある者は携帯電話でゲームをし、ある者はメールをし、またある者は大きな声で通話している。着信音も異常なくらいに大音量で、ほとんどの者がベルではなく中国ポップの着メロを使用していた。マナーモードにしている者は、おそらくいない。

また、以前「新幹線が怖い!」とヘルメット着用で乗車した中国人が話題になったが、そのような様子を見せる者は皆無であり、皆一様に「あ~、ヒマだ……。早く目的地に着かないかなぁ」といったあんばいである。高速鉄道自体は速いのだが、上海虹橋駅―温州南駅間には多くの停車駅があり、想像以上の時間がかかる。結局、目的地である温州南駅に到着したのは4時間半後だった。

・次は杭州行きD3212に乗車

次はそこからUターンして杭州行きD3212に乗車。事故により衝突された側の杭州駅発―福州南駅行きD3115とは逆の路線になる。座席は先ほどと同じ2等席で、価格は138元(約1670円)。しかし2等席とはいえど、先程とは違って1人1人に座席がある、いわゆる新幹線といった感じの席である。ちなみにこの列車は、この日の北部行き最終電車。乗車率はほぼ満席だ。

さすがに最終電車とあって、乗客はみんな疲れている様子。リクライニングシートを限界まで倒し、グッタリと寝ている人もたくさんいる。停車駅ごとに乗客は少なくなり、終着駅の杭州に近づくにつれて座席はガラガラに。出発から約3時間半後に、杭州駅に到着した。

・上海虹橋駅へ向かうG7310の1等席に乗車

最後は杭州駅から出発地である上海虹橋駅へ向かうG7310に乗車。購入したのは気合いを入れてグレードの高い1等席、131元(約1580円)だ。この車両に乗り込んでいるのは、いかにも「お金持ってます」的な人が多く、そんな人を満足させるための座席もフッカフカ。疲れた足を休ませるための「足置き」まで付いている。まるで日本の新幹線だ。

・コンセントまである! 大満足!!

さらに車両の一番前の座席にはコンセントまで設置されており、ノートパソコンを駆使するビジネスマンにも対応できる設備となっている。さすがは1等車、大満足である。なお、一番後の車両は1等車よりもグレードの高い特等席(VIP席)が。チケット購入時にも完売であり、さらに実際に荷物も置かれていたので、おそらく利用客はいると思われる。

・そこに新幹線があるから乗る

日にちや時間帯にも左右されるとは思うが、記者(私)が新幹線を利用して感じたのは、上海から南の路線に関しての乗車率は極めて高いということ。事故を気にするよりも、「そこに新幹線があるから乗る」といった印象を強く受けた。旅を快適にしてくれる中国の新幹線。今後、事故のないよう切に願うばかりだ。

Report:GO羽鳥
Photo:RocketNews24.

▼詳しい説明付きの上海―温州南―杭州―上海間の中国新幹線(高速鉄道)