オーディション番組でその才能を発揮し、一躍世界のスターとなったスーザン・ボイル。彼女の才能を見出したイギリスのテレビ番組「Britain’s Got Talent」は世界各地でリメイクされ、お隣韓国でも「Korea’s Got Talent」が先週の6月4日からスタートした。

そしてその初回の放送で、スーザン・ボイルを彷彿とさせる新スターが誕生し、現在世界中の人がその人物に注目している。その人物の名はチェ・ソンボン。彼は22歳の韓国人男性で、動画冒頭に映し出された彼は自信なさそうにふさぎ込んでおり、次のように心境を語った。

「今回この大会に参加することになって、とても心配ですが、他の人みたいに普通の生活が送りたくて……歌は下手ですが、歌っている時だけは、自分じゃない違う人になった気分になれます」

緊張しながらステージに登場したチェさんは審査員の「今、何の仕事をしているんですか?」という質問に、少し恥ずかしそうに「肉体労働」と答えた。そして審査員が彼のオーディション申込用紙の家族欄に、何も書かれてないことについて質問し、チェさんの生い立ちが徐々に明らかになっていく。

チェさん 「僕が3歳の時、孤児院に預けられ、5歳の時、孤児院で殴られるのが耐えられず逃げてきました」

審査員A 「それなら孤児院から逃げた後は、どうやって生活してきたんですか?」

チェさん 「5歳からガムとかエナジードリンクとかそんなものを売りながら、10年間生きてきました」

審査員B
「誰かと一緒に生活してきたんですか?」

チェさん 「いいえ、一人で」

審査員B 「5歳からずっと一人ですか?」

チェさん 「はい。(画面が変わり)ほとんど10年間そうやって生きてきました。寝る場所も階段とか、公園のトイレとかでした。10年間カゲロウみたいに……」

審査員B 「学校には通いましたか?」

チェさん 「いいえ、小学校、中学校は行かず、検定試験を受けました。学校みたいな場所に行ったのは高校が初めてでした」

審査員B 「頑張りましたね。今日は歌を歌ってくれるんですか?」

チェさん 「はい」

審査員B 「歌を歌うのが楽しいですか?」

チェさん 「楽しいというより、カゲロウみたいに生きてきた中で、初めて好きになったものが音楽でした。歌える曲は多くはないけれど、歌うことが好きです」

審査員B 「それでは、歌って下さい」

そうして彼はサラ・ブライトマンの『Nella Fantasia』を歌い始めた。彼の素晴らしい歌声はまたたく間に会場中の人の心を揺さぶり、多くの人の涙を誘った。彼の歌に涙した審査員は「ただあなたを抱き締めてあげたい気持ちです」とその感動を表現し、また他の審査員は目に涙を浮かべながら「なぜ歌を歌いたいんですか?」と尋ねた。

すると彼は次のように歌に対する思いを語っていった。

チェさん 「僕が子どもの時、不幸なことがたくさんあって。どこかに売られたこともあったし。でもナイトクラブでガムを売っている時に、ある人がクラブで声楽(せいがく)しているのを見たんです。ナイトクラブは大抵楽しい音楽ばかり流すけれど、その中でまじめに声楽することに魅了されたんです。その時から声楽が好きになりました」

審査員A 「だから声楽がしたいんですか?」

チェさん 「はい」

審査員A 「確かにあなたの体の中には楽器が入っているみたいです。ちゃんと音楽の勉強はしてないんでしょう?」

チェさん 「ただいろんなことをしながら、学校でマスタークラスみたいなものがあったら、そこに行って聞いたりして、一人で練習しました」

審査員A 「この大会でどういう結果になるか分からないけれど、レッスンができるだけ続けられるように私がなんとかしてあげたいですね。今日は素敵な歌ありがとうございました」

チェさんは見事、審査員全員から第2ラウンド進出への承認をもらい、スターダムへ駆け上がる大きな一歩を踏み出した。

現在彼の動画には英語字幕がつけられており、世界中で視聴されている。そのコメント欄には「ただただ泣いた」、「私たちはあなたを応援するよ」など彼を賞賛するコメントが多数寄せられており、すでに多くの人が彼のファンになったようだ。

自分の人生を一変させるほどの才能を持っていたチェ・ソンボンさん。きっと彼も公の前に出て初めて、自分がいかに恵まれた才能を持っているかに気付いたことだろう。次は、どんな世に眠る才能が発掘されるのか楽しみである。

(文=田代大一朗

参照元:Youtube/gmldnjsroEl

▼こちらがその動画