「明日の朝10時までに書類を提出」、「あと3時間以内に納品」など常に時間に追われる現代の生活。いっそのこと、時間なんてなくなってしまえばいいのにと思ったことはないだろうか? 実は世界には、時間という概念が全くない部族が存在していたのだ。

その部族とは、ブラジルのアマゾン熱帯雨林に住むAmondawa族。彼らについて調査したポーツマス大学のクリス・シンハ教授によると、Amondawa族は時計やカレンダーも持っておらず、使っている独自の言語の中にも「時間」、「週」、「月」、「年」を意味する言葉がないらしい。

シンハ教授、言語学者、人類学者などで構成された研究チームは、Amondawaの人々がどのように来週や去年という概念を言葉で伝えているのか調査するために、8週間彼らと共に生活した。

そしてその結果、彼らの言語には4までの数字しかないこと、そして私たちでいう「時」に関して彼らが認識しているのは「日中か夜か」、「雨季か乾季か」しかないことが分かった。

また、年齢という概念も全くなく、その代わりに幼少期から青年期など人生の段階が変わったり、部族内での地位が変化したりすると、名前を変えるという。例えば、自分に新しい弟ができたら、現在の自分の名前を弟にあげ、新しい名前を名乗るようになる。

今まで時間というものは、人類に普遍的に根付いている概念として考えられてきたが、今回の調査結果によって、それは間違いだったということが証明された。

このように現代の私たちと全く違う生活を送っているAmondawa族を見て、シンハ教授は次のように語っている。

「彼らにとって『時は金』ではありません。また、何かを達成するために時間に追われるというようなこともありません。誰も来週、来年のことなど話さないのです。なぜなら彼らには 『週』、『月』、『年』という言葉すらないのですから。彼らは一種の自由を享受している、幸運な人々と言えるでしょう」

Amondawa族が初めて外の世界と接触したのは1986年のことで、当時約150人いたAmondawaの人々はその後も、狩りや作物の栽培など伝統的な生活様式を守ってきた。しかし、電気やテレビなど現代技術が徐々に彼らの生活に浸透していき、ついにポルトガル語を話す人まで出てきた。その結果、時間の概念を持たない彼ら独自の言語は現在消滅の危機にあるという。

時間にとらわれずに生きるAmondawaの人々。確かに日々時間と戦っている現代人の生活を考えると、彼らの生活が羨ましく思える。しかし時間という概念を持っていると、スムーズに待ち合わせができたり、明日、来年など他人と同じ時の認識を持てたりするなど様々な利点があるのも事実。ぜひこの機会に、自分にとって「時間」とは何なのか考えてみてはいかがだろうか。

(文=田代大一朗

参照元:Telegraph(英文), DailyMail(英文)

▼左が研究チームの一員、そして右の2人がAmondawa族の親子

▼電柱が立つ彼らの居住区

▼Amondawa族が住んでいる地域